画像:年表、先カンブリア時代

化石のこばなし スノーボールアース

現在の地球は南北の両極など高緯度地域と山岳に氷河が発達していますが、それ以外では氷河がない、部分的に凍結した状態です。一方、恐竜の全盛期である中生代白亜紀の中頃は、両極地域も温暖で地球上に氷河は存在しませんでした。その反対に地球史46億年の歴史の中には地球全体が凍結した時期もあったのです。

地球の気温を決定している大きな要素は、太陽から光を介して受ける熱と大気中の二酸化炭素による温室効果です。自然状態の地球では、二酸化炭素の最大の排出源は地球上の火山活動であり、逆に最大の吸収源は岩石の風化作用によって大気中から二酸化炭素が取り除かれることです。風化作用は温度と正の相関関係を持っていて、二酸化炭素濃度を一定に保って一定以上の気温上昇・低下を防ぐという緩衝作用があります。そのために気温が安定に保たれるのです。

ところが火山活動が極端に弱くなると二酸化炭素濃度が風化作用による緩衝作用を越えて低下してしまい、暴走的に気温低下が始まることがコンピュータシミュレーションでわかってきました。寒冷化して大陸が氷河や雪で覆われると、太陽光の反射率が高まって熱を受け取れなくなり、さらに気温低下に拍車がかかります。そしてついには海洋の表層全体も凍結してしまって、地球全体が氷に覆われてしまいます。この状態を全球凍結(スノーボールアース)と呼びます。

一度、凍結状態になると永遠にそのままということではありません。凍結状態でも海底や陸上の火山活動により、大気中の二酸化炭素は少しずつ増加し、大気による温室効果が高まります。数百万年間経過して温室効果がある限界以上に高まると、気温が上昇して海洋の凍結状態が解除されると考えられます。

これらの証拠が、アフリカ南部のナミビアなどの6億年前および7億年前の地層に残されています。氷河に覆われたことでできる地層が当時の赤道域まで広がっていたことと、地層中の炭素同位体の分析から、生物活動が(ほぼ)全く存在しないこと(光合成が行われていない)がわかったのです。

このような全球凍結は、生物の進化にも大きな影響を与えた可能性が考えられています。

  • 画像:ダイアミクタイトと層状炭酸塩岩
    ダイアミクタイトと層状炭酸塩岩
    氷河によって作られたダイアミクタイト(人物のあたり)とその上に積み重なる炭酸塩岩(キャップカーボネイト).先カンブリア時代(7 億年前).ナミビア.清川昌一氏写真提供.
  • 画像:層状炭酸塩岩層
    層状炭酸塩岩層
    炭酸塩岩(キャップカーボネイト)は向かいの山の頂上まで積み重なっている.先カンブリア時代(7 億年前).ナミビア.清川昌一氏写真提供.
  • 画像:ディッキソニア(エディアカラ動物群)
    ディッキソニア(エディアカラ動物群)
    エディアカラ動物群の化石は,スノーボールアースの直後に進化したのだろうか? 先カンブリア時代(6 億年前).オーストラリア. 幅15cm.

このページの先頭に戻る

Copyright©2012 OsakaMuseum of Naturel History All Rights Reserved.