画像:年表、ペルム紀ー三畳紀、白亜紀ー古第三紀

化石のこばなし 生物の大量絶滅—P/T境界とK/Pg境界—

地質時代は、地層から産出する化石の種類によって区分されています。これは言い換えると、それまで栄えていた生物のグループの多くが絶滅して、新しい生物のグループが進化・発展したことを示しています。個々の生物ごとで見ると、古い種が絶滅して新しい種に取って代わるということはいつの時代にも起こっていますが、多くの生物種で同じ時期に絶滅が起こる「大量絶滅」事件は、古生代以降では5回起こったと考えられています。

その中でも特に古生代・中生代・新生代の境では、生物の種類が大きく入れ替わっていて、大規模な大量絶滅が起こったと考えられています。それぞれ古生代と中生代の間はP/T境界( ペルム紀Permianと三畳紀Triassic)、中生代と新生代の間はK/Pg境界(白亜紀Kreide(ドイツ語)と古第三紀Paleogene)の大量絶滅事件とよばれています。

P/T境界の大量絶滅:地球史の中で最大の大量絶滅事件と考えられています。生物を分類する科・属・種というレベルで見ると、海にすむ無脊椎動物では、科の数で57%、属の数で83%が、種の数では実に96%がこの境界で絶滅したと推定されています。大量絶滅の原因は断定されていませんが、陸上での大規模火山活動による気候の激変と、海洋全体が無酸素状態になったことが原因ではないかと考えられています。

K/Pg境界の大量絶滅:白亜紀の終わりに、陸上では恐竜、海ではアンモナイトとそれぞれ中生代を代表する生物をはじめ、多くの種が絶滅しています。P/T境界の大量絶滅の方が規模が大きいのですが、恐竜の絶滅ということがあり、K/Pg境界の大量絶滅の方が有名です。原因については、特に恐竜の絶滅については諸説が入り乱れていたのですが、1980年にアメリカのアルバレズ親子が「巨大隕石の落下に伴う影響で恐竜を含むK/Pg 境界の大量絶滅が起こった」とする考えを提唱し、大論争の末に現時点ではこの説が正しいと考えられています。その証拠は次のようなものです。

  • 世界各地のK/Pg境界でイリジウムという元素が異常に濃集した粘土層がはさまれている。イリジウムは地表ではごく微量しか含まれないが、隕石には多く含まれる。
  • 同じ粘土層には、隕石の衝突によってできるテクタイトや衝撃石英が広範囲に含まれている。
  • メキシコのユカタン半島で直径100km以上のクレーターが地下に存在することがわかり、K/Pg境界の年代にできたことがわかった。当時は浅い海が広がっている場所だった。
  • キューバやベリーズで、巨大隕石の衝突で引き起こされた巨大津波によってできた堆積物や、隕石衝突の爆発でつくられた堆積物(イジェクター層) が見つかる。

※これまでK/Pg境界はK/T境界(白亜紀K−第三紀Tertiary)境界とよばれていました。しかし、1989年に第三紀という名称はふさわしくないとして国際地質科学連合(IUGS) の正式な用語から外された結果、K/T境界ではなくK/Pg境界とよぶようになっています。

  • 画像:京都府福知山市に露出するP/T境界
    京都府福知山市に露出するP/T境界
    丹波帯のチャート層中にP/T境界が含まれている.赤線のところがP/T境界. 京都府福知山市.山北聡氏写真提供.
  • 画像:左の写真の囲んだ部分
    左の写真の囲んだ部分
     
  • 画像:コノドント集合体
    コノドント集合体
    P/T境界付近から見つかった.三畳紀前期.京都府福知山市.山北聡氏写真提供.
  • 画像:K-Pg境界付近のチョーク層
    K-Pg境界付近のチョーク層
    白亜のチョーク層が積み重なり,ガンフリントチャートがはさまっている.
  • 画像:K-Pg境界の粘土層
    K-Pg境界の粘土層
    境界部は研究者に採集されて,へこんでいる.デンマーク.
  • 画像:K-Pg境界の不思議なれき層
    K-Pg境界の不思議なれき層
    巨大隕石衝突によって引き起こされた津波に由来するれき岩層.れきの間には,隕石衝突でできた衝撃石英や衝突によって引き起こされた大火災由来の煤などが含まれている.キューバ.清川昌一氏写真提供.
  • 画像:K-Pg境界のイジェクタ層
    K-Pg境界のイジェクタ層
    カバンがおいてあるあたりが,隕石衝突により,地球物質が溶けて飛び散ったイジェクタが堆積した地層.その上には津波によるれき岩層が積み重なる.ベリーズ.清川昌一氏写真提供.

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