カブトエビ班見出し画像
カブトエビ班写真  カブトエビ班は原始的な甲殻類である「鰓脚類」の仲間の分布を調べます。鰓脚類の卵は乾燥状態で長期間耐え、水に出会うと急速に孵化、成長、産卵して一生を終えます。もともとは一時的にできる水たまりのような環境をすみ場所にしていたと考えられますが、稲作水田という環境に見事に適応し、田植え後の数週間だけ見ることができます。 淀川水系で見られる鰓脚類のうち、大型で同定しやすいホウネンエビ、カブトエビ類、カイエビ類を対象とします。
淀川水系の生き物タイトル画像
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ホウネンエビ

Branchinella kugenumaensis
関東以南の水田に見られる鰓脚類です。腹側を上にして泳ぎます。おそらく淀川水系でも水田に広く分布すると見られます。

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図)上左:ホウネンエビ 上右:ホウネンエビ抱卵メス

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カブトエビ類

Triops spp.
海にすむカブトガニと間違える人がいますが、全く別の生き物です。日本にはアジアカブトエビTriops granarius、アメリカカブトエビTriops longicaudatus、ヨーロッパカブトエビTriops cancriformisの3種がすんでいますが、近畿地方にすむのはアジアとアメリカだけです。2種の外見上の形態はよく似ていますが、実体顕微鏡を使えば尾節の棘の位置の違いなどで見分けられます。生態的な違いはよくわかっていません。1970年代後半に行われた調査では、淀川水系の茨木市内では沖積平野の水田にアジアが、段丘礫層上の水田にアメリカが分布するという傾向がありました。現在でも同様の分布傾向となっているのか、興味深いところです。

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図)上左:アジアカブトエビ背面から
上右:アジアカブトエビ尾節
中左:アメリカカブトエビ背面から
中右:アメリカカブトエビ尾節
下:1970年代後半の大阪府のカブトエビの分布(桂、1978)

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カイエビ類

半透明の殻を持っており、二枚貝のように見えますが、鰓脚類(甲殻類)のなかまです。淀川水系での分布はまだよくわかりませんが、大和川水系の調査ではトゲカイエビLeptestheria kawachiensis、カイエビCaenestheriella gifuensis、タマカイエビLynceus biformis、ヒメカイエビ属Eulmnadia sp.の4種の分布が明らかになっています。

図)上:トゲカイエビ、下左:ヒメカイエビ属、下右:タマカイエビ