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クマゼミの声もうるさい今日この頃,みなさん体調など崩しておられないでしょうか.採水期間が近づいてきました.今回は真夏の採水です.日射病や熱射病にかからないように,暑さ対策は十分して採水に出かけてください.(中条) ■今後の日程 ◎8月16日(土)〜24日(日):第4回採水 ◎11月22日(土)〜30日(日)(予定):第5回採水 ◎12月6日(土)(予定):「1年間のデータをまとめる」 ■研究助成金が採択されました! この大和川水系調査グループ:水質班の活動に関して,河川環境管理財団から「国民的啓発運動」分野での助成が採択されました. ・題目:「流域住民参加による大和川水系水質調査」 ・期間:6月から来年5月 今回の採択された助成金は,水質調査に使っているフィルター・ポリ瓶や分析で使う薬品類など,消耗品費に使用します. ■第3回採水フィールドデータ(PDF:28KB)
水も温かくなり,フィールドデータも変化が現れてきたようです.表を見るだけではわかりにくいかもしれませんが・・・.分析結果と合わせて,地図上に図示したものをうまく表現できるように工夫中です. ■第1回採水(2002年11月分)分析結果の報告(PDF:22KB) 2002年11月より始まった採水は,2003年5月の採水で第3回目が終了した.分析の方も徐々に進み,ようやく第1回採水試料の分析が終了した(別紙参照).ここでは,その分析結果を各分析項目ごとにまとめてみる. (1)土地利用 【大阪】大和川本流に沿う地域は,主に住宅や工場が分布する.また大和川本流の南側を流れる支流に沿っては,中〜下流域で住宅及び工場が分布する.石川の上流域と石川の支流である飛鳥川(大阪),梅川に沿った地域では,畑,林及び水田など農地として利用されているところが多い.大和川の北側の支流域では,所々に農地が分布するものの,主に住宅及び工場が分布する. 【奈良】大和川本流の大阪に近い付近では住宅地が多く分布する.また,大和川本流の支流域では,主に住宅が分布しているが,住宅とあわせて畑や水田など農地が分布しているところが多い. 【大阪】大和川本流の底質は主に泥,砂及び礫で構成されているところが多い.また大和川本流の支流である石川と石川の支流である飛鳥川(大阪)や梅川では,底質は所々泥で構成されるものの,概ね砂及び礫である.住宅及び工場が多く分布している西除川中〜下流や大和川本流の北側を流れる玉串川及び楠根川下流では,底質が一部コンクリートで構成されている. 【奈良】大和川本流の底質は,主に砂及び礫で構成されている.大和川本流の支流域では,水田と住宅が分布する地域で,底質が所々コンクリートで構成されている. 濁りは直接溶存成分に関係はないが,河川水の起源や流域の全般性状を知るうえで重要である.濁りの主な原因としては,河床の泥などの巻き上がり,プランクトン及び微生物の棲息,そして家庭及び工場からの懸濁物質を含む水の排水が考えられる. 【大阪】大和川本流では,東除川との合流点付近で比較的濁度が高くなる.この合流点から下流側では緑色系の濁りを示すが,上流側では褐色系の濁りを示すという特徴がある.また大和川本流の支流については,西除川が上〜下流にかけて全体に濁度が高く,上〜中流部では褐色系の濁りを示し,下流部では緑色系の濁りを示す.石川では,石川の支流飛鳥川(大阪)との合流点付近で褐色系の濁りが高くなるが,大和川本流へ向かうに従い濁度は低くなる.大和川本流の北側の河川では全体に濁度が高い.特に玉串川及び平野川の住宅及び工場が分布する地域で,濁度は高い. 【奈良】大和川本流では竜田川との合流点付近でやや褐色系の濁りが高くなるものの,全体には,大阪側の大和川本流に比べそれほど濁度は高くない.大和川の支流については,竜田川が全流域で高い濁度を示している他,大和川本流の南側を流れる葛下川下流部,高田川上流部,葛城川中〜下流部,飛鳥川(奈良)上流部,そして初瀬川下流部で褐色系の高い濁りを示す.その他,秋篠川中流部で緑色の濁りを示す. 塩化物イオンは,一般に人口密度の多い地域の井戸水や河川などに多く検出される.これは生活排水中に塩化物イオンが尿や汗として含まれることや,工場排水中に含まれることが原因と考えられている. 【大阪】土地利用図と比較してみると,住宅及び工場が密集する大和川本流では概ね25〜100ppmで,周囲も河川に比べやや高い値を示す.これは塩化物イオンが主に家庭及び工場の排水からの供給されたためと考えられる.また,西除側下流部,東除川下流部,石川中流部では特に高い値を示し,75〜150ppm以上の濃度が検出された.石川とその支流である飛鳥川(大阪)の合流点では塩化物イオンの濃度がやや低くなるが,これは石川の塩化物イオン濃度が,飛鳥川の合流により薄められ,低くなったと考えられる.また,大和川本流の北側を流れる河川については,全体に濃度は25〜75ppmを示し,恩智川中流部においては100〜125ppmといった高い値を示す. 【奈良】大和川本流では,ほぼ全流域で50〜75ppmを示す.また大和川本流の支流では,全体に上流部で濃度が概ね25ppm以下であるのに対し,中〜下流部では25〜75ppm程度の比較的高い値を示す.土地利用図において,支流は全体に中〜下流地域は,上流に比べて住宅がやや多く,家庭排水から塩化物イオンの供給があったと考えられる. 硝酸イオンは,畑地に投入される肥料成分の一種で,地下水への涵養や,農業用水の河川への排水により河川に供給される. 【大阪】土地利用図と比較してみると,住宅及び工場が密集する大和川本流で概ね1〜5ppmを示す.また西除川下流部の主に住宅が分布する地域では,ほとんどが1ppm以下と極端に低い値を示す.この地域では農地が少なく,農地からの硝酸イオンの供給が少なかったためと考えられる.また石川中流部や東除川中〜下流部では,15ppm程度の濃度が検出されたが,東除川周辺にはあまり農地が見られないことから,この地域では農地からの供給以外の原因があった可能性が考えられる.石川とその支流である飛鳥川(大阪)の合流点では硝酸イオンの濃度がやや低くなっているが,これは飛鳥川の合流により濃度が薄められ,低くなったと考えられる.また,平野川上流では濃度は15ppm以上を示し,この地域も農地が少ないことから,農地以外からの供給源が考えられる. 【奈良】大和川本流では,濃度は2.5〜10ppm程度を示す.また,大和川本流の支流では,概ね濃度は1〜5ppmを示す.中でも竜田川中流部,秋篠川中流部,秋篠川と佐保川との合流点付近では濃度が5〜15ppmと比較的高い値を示す.佐保川上流部及び大和川(初瀬川)上流部の濃度は1ppm以下と非常に低い. 硫酸イオンは,石油,石炭の燃焼から生ずる硫酸塩が雨に溶け込み,地上や河川へと流れ込むもの,あるいは家庭及び工場排水に硫酸塩として含まれ河川へ流れ込むものがある. 【大阪】土地利用図と比較してみると,住宅及び工場が密集する大和川本流では,濃度は概ね10〜40ppmを示すが,大阪湾に注ぐ河口付近で10〜30ppm程度とやや低い値を示す.同じく周囲が住宅及び工場として利用されている西除川下流部及び東除川下流部では40〜75ppmと高い値を示す.更に,大和川本流の北側を流れる河川では,全域で濃度は30ppm以上を示し,特に平野川上流では75ppmと非常に高い値を示す.土地利用図から大和川北側の河川域でも,所々は農地として利用されているものの,主に住宅及び工場が多いことから,硫酸イオンは,それらの排水から供給されたものと考えられる. 【奈良】大和川本流で概ね30〜40ppmを示す.また大和川本流の支流全域では,下流部で濃度は10〜30ないし40ppmを示す.葛城川中流部では40〜70ppm程度の比較的高い値を示しているが,住宅が多いことから家庭からの排水の影響していると考えられる.大和川(初瀬川)上流では10ppm以下の非常に低い値を示す.全体に硫酸イオンの濃度は大阪側の値よりも低い. リン酸イオンは,合成洗剤中に助剤として,生活排水中に含まれている場合がある.現在では,無リンの洗剤の普及により家庭排水中のリン酸イオンの含有量は徐々に少なくなっているが,し尿処理排水にも含まれるため,リン酸イオンの濃度は生活排水の影響を示す指標となっている. 【大阪】土地利用図と比較してみると,住宅及び工場が密集する大和川本流で,濃度は概ね0〜2ppmを示し,河口付近では1ppm以下と比較的低い値を示す.また大和川本流の南側を流れる河川は,上流部でそのほとんどが0ppmを示し,中〜下流にかけては0〜2ppmを示す.西除川中流部の住宅地が分布する地域では2〜3ppmと比較的高い濃度を示す.一方,北側の支流の濃度は概ね0〜2ppmであるが,恩智川上流で一部濃度が3ppmを越えるところがある. 【奈良】大和川本流の全域で概ね1〜2ppmを示す.大和川本流と富雄川,また大和川本流と飛鳥川(奈良)との合流点付近では濃度は2〜3ppmと比較的高い値を示す.支流は全体に,上流で0ppm,中〜下流で概ね0〜1ppmを示す.また,竜田川,富雄川そして高田川においては,周囲の河川に比べ濃度は高く,竜田川の上流部及び下流部では1〜2ppm,中流部で3 ppm以上,富雄川の上〜中流部で0〜1ppm,下流部で1〜3ppm,また高田川は,下流部は不明だが上流部で1〜3ppm以上の値を示す.
『これまでのまとめ』 本調査で,各河川の水質は周囲の土地利用に大きく影響を受けていることが分かった.住宅や工場が分布する地域では,それらの排水からの物質供給が濁度や濃度に大きな影響を与えていることが分かった.大和川本流に沿っては,奈良から大阪にかけて住宅及び工場が分布していた.そのため大和川本流の各成分の濃度が常に比較的高い状態にあった.大阪側では支流の各成分の濃度が比較的高いため,大和川本流への合流により物質が供給され,合流点付近で濃度が高くなる傾向が見られた.同様に,濁度についても各成分の濃度が高い箇所で高くなる傾向が見られた.また奈良側では合流点付近で多少濃度が高くなる箇所はあるものの,大阪側ほど支流からの物質供給は見られず,大和川本流は全体に濃度の変化が小さい傾向が見られた. 大阪側の大和川本流の南側を流れる支流では,住宅及び工場が多く分布する西除川,東除川そして石川の中〜下流部で各成分とも高い濃度を示す傾向があり,逆に住宅が少なく,所々農地が分布する上流部では低濃度であった.濁度は西除川下流部で緑色系の濁りを示したが,他は全域で褐色系の濁りを示した.一方,北側は住宅及び工場が上〜下流の全域に分布しており,各成分とも上〜下流部で常に高い値を示した.濁度は高く褐色系であった. 奈良側の大和川本流の支流については,全体に中〜下流部に住宅及び工場が分布しており,その排水の影響で各成分とも中〜下流部で濃度が高くなる傾向が見られた.また,上流部では,成分によってはやや濃度の高いものはあるものの,概ね低濃度であった.濁度は大阪側よりも概ね低く,秋篠川中流部で一部緑色系を示すが,全体に褐色系であった.
大和川水系全体をみて,奈良側の河川水に含まれる物質量は,大阪側に比べてやや少ない傾向にあったが,思ったほど差が見られないところもあり,奈良側の河川の汚染に注目していく必要があると感じた.また,これまでに3回の採水を行ってきたが,季節の変化により河川の水量,水温,色,におい等が変化していたように,水質もどう変化していくのか今後の分析結果を注目していきたい. (文責:K.E.)
■行事の報告 ◎「水の話2:水質汚染のメカニズム」(2003年6月1日:自然史博物館) 6月1日,水質汚染について益田先生の話を聞きました.みなさん専門的知識を持っておられる方が多い中,私は何も特別な知識もないのに仲間入りさせていただいています.大和川の安彦大橋のすぐそばに住んで5年になります.見た目にはゴミも少なく澄んでいるのに日本一汚い川と言われているのはなんでだろう・・・と思っていました.そんな時,この調査を知りぜひ参加させてくださいと申し込みました. 今回は益田先生から,次の話を聞きました. ・人口と水の使用量は比例している. ・灌漑用水が水の使用量の70%を占めている. ・人が生きていくためには1日1人20Lの水が必要だが,3Lくらいしか使えない国もある. ・日本は世界で2位で,1日600Lも使用している. ・バングラデシュでは,ヒ素汚染はWHOの基準に合わせると,飲める水はなくなる. ・1970年代の緑の革命で,植物栽培に地下水を利用するようになり,15年後くらいからヒ素中毒患者が出始めた.それまでは溜め池の水を利用していた.私は溜め池の方が汚く,地下水の方がきれいと思っていたので意外でした. ・地下水は流れが緩やかなので,1度汚染されるとなかなか回復しない. ・世界で死亡者の1/3が水が原因で亡くなっている. このような話をグラフや写真を見せていただきながら,お話を聞きました. これから大和川の調査が進むとどのような結果が出るのかを待ち遠しい気持ちです.昔のように川で水遊びができる日が来ることを願っています.(M.S.) ● 6月8日,22日に,5月採水分のアルカリ度,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウムの分析を行いました.アルカリ度は滴定で,それ以外は原子吸光分析で行いました.また,これまでの分析結果を図上で表し,傾向が見えないか検討しました.このような分析を採水後,有志で行っています.参加を希望される方は中条までお知らせ下さい. 分析会の様子(2003年6月8日,大阪市立大学) |
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