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本の紹介「ゾウの時間 ネズミの時間」

「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」本川達雄著、中公新書、4-12-101087-6、680円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

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【西川裕子 20020802】
●「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」本川達雄著、中公新書

 ゾウの寿命とネズミの寿命は異なる。けれど、心拍数や呼吸数はどんな大きさであれ一定。大きな動物には大きな動物の、小さな動物には小さな動物の、それぞれのペースに合わせた時を刻んでいる。
 進化が進むと大きくなる傾向があるが、大きいことは本当にいいことなのか?サイズはエネルギー代謝や食物摂取量、行動範囲などと比率関係を持つ。人間の「サイズ」はどんなものなのだろうか。
 小さな生物たちと大きな生物たちの持つ、それぞれの互いに異なった巧妙な仕組み。早く動く動物、動かない動物、ちょっとだけ動く動物のそれぞれの洗練されたデザイン。
 サイズを通して生物を知る。彼らの世界を知る。
 式と数字が出てきます。数学アレルギーさんはちょっと辛いかも。でも、目からウロコはいっぱいです。ヒトデの生き方が偉大だ、なんて思いもしませんでした。世界観が広がります。


【村山涼二 20020804】
●「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」本川達雄著、中公新書

 「心臓拍動を時計として考えるならば、ゾウとネズミは全く同じだけ生きて死ぬ」というのは驚きであった。標準代謝量は体重の0.751乗に比例する。昆虫のクチクラの外骨格は、軽くて乾燥に強い昆虫の成功の秘密である。気管、呼吸器、脱皮など、昆虫の生理に注意を引かれた。気管と脱皮の困難さが、昆虫のサイズを制限している。昆虫が、幼虫の間は草を多量に食べ、飛ぶようになったら蜜や樹液を食べるのは賢い生き方である。

動物も植物も、長い間の進化で、それぞれに、賢く生きている。

人間は、これから生物の生き方に学べることがあるのだろうか?人間は、サイズにふさわしい生き方から、その制限のハードルを乗り越えるのに、外からエネルギーその他多くの手段を利用しているが。

 お薦め度:★★★  対象:高校生以上


【和田 岳 20020809】
●「ゾウの時間 ネズミの時間」本川達雄著、中公新書

 副題の「サイズの生物学」の通り、動物の大きさが違えば、何が違い何が同じなのかを、いろいろと紹介してくれる。
 サイズを切り口に、形態学・生理学・生態学を横断しての議論は、とても興味深い。残念ながら、後半はサイズという切り口がややもすれば不明確になり、さまざまな生物のデザインを説明する方向になっていく。最後の2章にいたっては、サイズはほとんど関係してこない。
 大きなゾウは寿命が長く、心臓の鼓動のスピードは遅い。小さなネズミは、寿命が短く、心臓の鼓動のスピードは遅い。大きさによってこんな違いはあるけれど、一生の間の心臓の鼓動の数はほぼ同じ。これが、タイトルの由来となっていて、インパクトがある。つかみとしては完璧。でも最後まで読むのは辛いかもしれない。

 お薦め度:★★  対象:何となく生物学に興味のある人、高校生以上


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