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本の紹介「和食はなぜ美味しい」

「和食はなぜ美味しい 日本列島の贈りもの」巽好幸著、岩波書店、2014年11月、ISBN978-4-00-006226-8、2000円+税


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【森住奈穂 20150826】【公開用】
●「和食はなぜ美味しい」巽好幸著、岩波書店

 「地学の本です」「本当ですか?」と突っ込まれそうなタイトルだけれど、読んで納得。和食を支える出汁や山海の食材の背景には、必ず自然の営みがあるからだ。本書はマグマ学者と姪御さんが12か月の食べ歩きをするというスタイルで、カタイ話題も和気あいあいと進行していく。たとえば二月、1500万年前に超巨大地震を伴いながらアジア大陸から日本列島が分離することで生まれた日本海の話題を、富山氷見の寒ブリをいただきながら聞いていた姪御さん、「当時の人たちは大変だったのね!」、マグマ学者「幸いにも、まだ人類は地球上に現れていなかったが」、という具合。紀伊半島で起こった超巨大火山活動や瀬戸内海の成り立ちなど、関西に暮らす者にとって身近な話題がてんこ盛り。温泉も豊かな土壌や海も、“しわ”の上に日本列島が乗っかっていたからこその恩恵。感謝感謝。

 お薦め度:★★★★  対象:食いしん坊(求道型)

【中条武司 20150826】
●「和食はなぜ美味しい」巽好幸著、岩波書店

 和食の特徴の一つは季節に応じた食材を活かした料理であることのように思う。年中同じ食材がスーパーにならぶ昨今では、それを感じる機会も減ってきたように思うけど。この本は和食の季節ごとの食材・料理のうんちくを、日本の地質と無理矢理からめて語っている。ほんと無理矢理感が強くて、これ大丈夫かと感じることも。それぞれの紹介している地質と食材の情報が正しくても、それをつなぐ部分は正しいわけではないので注意が必要。とはいえ、違った方面からのうんちくを語りたい人にはおもしろいかも。でも、こんなこという人、実際にいたら、思わず海原雄山(or山岡士郎)か!って突っ込みたくなるけど。ちなみに54pの大阪層群堆積時の古地理図はかなり間違っています。

 お薦め度:★★  対象:和食のうんちくを違った方面から知りたい人

【西村寿雄 20150824】
●「和食はなぜ美味しい」巽好幸著、岩波書店

 著者は、近年いくつもの地質学普及書を出している地球物理(マグマ学)の専門家である。この著者はちょっとした和食通であるらしい。姪ごさんと全国各地の和食を楽しみながら、その和食の生まれてきた背景を地質学の観点から専門的にさらりと語っているのが本書である。例えば「鱧と昆布」の話。祇園祭と鱧の話を数ページにわたって書いた後、「ハモはどこから運んでくるの?」と姪ごさんのつっこみが入る。そこから地質学の話に一転、鱧は大阪湾沼島海域で獲れるという。ここは三波川帯で、鱧が多く棲息するわけが地質の話として語られていく。他に「ボタンエビ」「芋焼酎とワイン」「河豚」など全国各地の味と地質的背景が12場面で出てくる。各地に生きる和食の多彩な味は、複雑な日本の地質とも関係していることが読み取れる。

 お薦め度:★★★★  対象:和食とその背景に興味のある人

【萩野哲 20150825】
●「和食はなぜ美味しい」巽好幸著、岩波書店

 マグマ学者が姪と毎月旬の料理を食べ歩きながら、それら食材がなぜ美味しいか、産地の成り立ちから考察していく趣向の本である。ちょっとこじつけの感もあるけれど、フワフワの泥がたまった沼島南のハモや京都のタケノコのおいしさは、そうなのかもしれない。専門のマグマの知識は横に置いておいて、著者は美味しい料理やその料理法のみならず、生物についても詳しい。最近分かってきたアナゴの産卵場やサバのアニサキスの記述も詳しくて感心した。

 お薦め度:★★★  対象:まずは美味しい食べ物が好きな人、次に日本列島の成り立ちに興味がある人

【和田岳 20151030】
●「和食はなぜ美味しい」巽好幸著、岩波書店

 マグマ学者の著者が、姪っ子を連れて、美味い物を食べ歩き、そこで食から地学につながる蘊蓄を傾けるという趣向。
 1月は京都木屋町でおでん、2月は三宮で寒鰤、3月は北新地でボタンエビ、4月は木屋町で筍と桜鯛、5月は福井でこしび(クロマグロの子)、6月は三宮で鰻と穴子、7月は金閣寺近くで鱧と昆布、8月は木屋町で甘鯛と鯖、9月は芦屋で蕎麦と鮑、10月は自宅で松茸と栗、11月は自宅近くのダイニングバーで芋焼酎とワイン、12月はミナミで河豚。ええとこで、ええもんばっかり喰っとる。
 で、そんなうまいもんが喰える理由を、変動帯、日本海の拡大、伊豆半島の衝突、瀬戸内海の成立、紀伊半島の隆起、海底火山、紀伊水道の三波川帯、沈む若狭湾、火山帯、花崗岩、巨大カルデラ、九州の将来などと結びつけて語りだす。まあ上手に専門に我田引水してること。
 完全に美味しんぼの地学版をやってる。姪っ子の妙に鋭い質問もお約束。マンガ化を期待しよう。

 お薦め度:★★★  対象:美味しんぼを読んでる人

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