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本の紹介「ウイルスは悪者か」

「ウイルスは悪者か お侍先生のウイルス学講義」高田礼人著、亜紀書房、2018年11月、ISBN978-4-7505-1559-5、1850円+税

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【萩野哲 20190209】【公開用】
●「ウイルスは悪者か」高田礼人著、亜紀書房

 エボラとインフルエンザという、現在最も危惧されているウイルスを対象として研究している著者が、ウイルスが生物かどうか、分類はどうなっているのか、どのように感染するのかというような基本的な事項をわかりやすく示すとともに、エボラウイルスの生態推定や創薬の現状のような最先端の研究成果を紹介している。危険なウイルスを扱うためには、それらが絶対に漏れない施設と、万一のことを想定した防御服などが必要だ。現地に赴く際には、自ら開発した予防薬も携行している。空港で怪しまれる格好についてはあまり気にしていないようだけど。近い将来に、これら危険なウイルス病から解放される状況が期待できそうだ。さて、タイトルの「ウイルスは悪者か」については最後のほうにほんの少しだけ触れられている。“ウイルスは宿主を生かして自分も生きる…ウイルスの感染によって致命的な病気を発症するのは偶然の産物でしかない…”。そうだそうだと読み進めると、剣道の話に。ちょっと著者の自己顕示欲をガマンすればすばらしい本である。

 お薦め度:★★★  対象:ウイルスの正体を知りたい人
【六車恭子 20190222】
●「ウイルスは悪者か」高田礼人著、亜紀書房

 今冬もインフルエンザが猛威を振るっている。特異な風貌の著者は人畜共通感染症のスペシャリストだ。先回り予防戦略は自然宿主を突き止めるのが不可欠!ザンビアの森でコウモリを捕獲し、シベリアの凍土やモンゴルの大草原で渡り鳥の糞を採集してまわる。エボラウイルスやインフルエンザウイルスの菌を求めての過酷な旅である。
 毎年繰り返されるパンデミックの原因のウイルスの特定やワクチンの製造は彼らの研究の成果でもある。
 ヒトは進化の課程で様々な病原菌と遭遇し、免疫システムを高度に進化させてきた。しかし今、自然界で長い時間をかけて築き上げられたウイルスと自然宿主の蜜月関係が人間によって壊されてきたのだ!
 感染予防としてのワクチン接種に粘膜ワクチンの可能性にも言及されていた。「全身免疫系」をめざすには、体の「中」はチュ一ブの穴、構造上の「外」、経鼻ワクチンの基礎研究も興味深い。著者の今後に目が放せない!

 お薦め度:★★★★  対象:感染症の最前線に興味のある方
【和田岳 20190221】
●「ウイルスは悪者か」高田礼人著、亜紀書房

 エボラ出血熱とインフルエンザのウイルスを研究している著者によるウイルスの真実の姿と、その研究者を紹介する一冊。
 第1章と第2章は、ウイルスという存在の紹介。ウイルスは生物か?から始まって、ウイルスの形態と分類、そしてウイルス感染症の基礎知識が説明される。第4章から第8章はエボラウイルスの話。アウトブレイクの様子や、エボラウイルス感染の仕組みを細かく紹介し、治療薬開発の取り組みが描かれる。第9章から第12章では、インフルエンザウイルスの話。過去のパンデミック、インフルエンザウイルスの分類と形態、鳥・豚・人を巡る宿主の壁を乗り越える話。最後には、ワクチンや抗インフルエンザ薬についての解説も。
 エボラウイルスはアジアにもいるかもとか。高病原性鳥インフルエンザに人が感染するには濃厚接触が必要な訳とか。いろいろ興味深い内容があるのだけど、その合間に、著者の研究の歴史に加えて、キーボード弾けるとか剣道やってるとか、自身の紹介が多めにはさまる。

 お薦め度:★★★  対象:ウイルスが気になる人、鳥インフルエンザについて知りたい人
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