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本の紹介「海をわたる蝶」

「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房、1973年2月、ISBN4-7891-1002-8、1600円+税


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【村山涼二 20040817】【公開用】
●「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房

 「海をわたる蝶」として、イチモンジセセリはなぜ大移動するか、マメを求めて移動するウラナミシジミ、モンシロチョウとスジグロシロチョウの幼虫の食草と棲み分け関係など、3種のちがったタイプの蝶の生活史より移住性を追求している。何百年か千何百年か昔、朝鮮半島からか中国大陸から、モンシロチョウの群れの飛来を想像もしている。一方、「海をわたらぬ蝶」(ギフチョウなど日本固有種)の定住性と一化性と森林と結びついた生活がある。原始的自然、農村的自然、都市的自然と、自然変化と蝶の種数の変化を纏めているが、人類の自然への関わりの自然変化への影響に厳しく警告している。30数年前に著者がこの本で述べている「自然変化の本質の厳しい追及の必要性」は、今、さらに重要性を増している。

 お薦め度:★★★★  対象:自然を大切に思う人たち

【和田岳 20050320】【公開用】
●「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房

 イチモンジセセリ、ウラナミシジミ、モンシロチョウというごく普通の3種を中心に、渡りや迷行を含めたチョウの移動の謎について解明しようとする内容。イチモンジセセリの大群の出現の話からはじまり、移動性の高いチョウと低いチョウの比較。さらには、渡ってくるチョウの供給源であるフィリピンに赴き、都市化による蝶相の変遷を調べ、生物地理学から話は氷河時代にまで及びます。ただし、蝶の渡りや移動性の話と、生物地理学の話が、スムーズにつながっていないのは残念なところです。
 正直、研究内容という面では、今読んでも目新しさはありません。むしろ、アマチュアや今から研究を志す人が、研究ってどんなものかを知る手がかりになる本でしょう。

 お薦め度:★★  対象:今から研究をしてみたい人、あるいは研究ってどんなものか知りたい人

【田中久美子 20040817】
●「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房

 イチモンジセセリ、ウラナミシジミ、モンシロチョウと普段は、気にもかけていなかったごくごく身近な蝶。それが読んでいくうちに群れとなって晴れやかに頭の中を舞い始める。
 渡りとの遭遇に始まって、旅立ちの背景、食草による地理的分布、渡りのコース、そして歴史は地学的考察に及び、ついには氷河時代にまでさかのぼる。身近でありふれていると思っていた生き物の生態学がこんなにも幅広く奥深いものなのかと驚かされる。改めて“自然史”というものの見方についても考えさせられる。

 お薦め度:★★★★  対象:虫に興味のある方はもちろん、興味のない人にもぜひ一読をおすすめ!

【六車恭子 20040816】
●「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房

 夏の終わり大移動を目撃する豊年虫・イチモンジセセリ、初冬から春先まで突然姿を消す豆類の子房や種子を食い荒らすウラナミシジミ、キャベツを食害するモンシロチョウ。人の営みのあるところに遥々海をわたって日本列島に住み着き繁栄している生物たちだ。
 日本の生物相形成と変遷は、人間の営み抜きには語れない。多様な現象の底に一貫して流れる法則性をさぐり、歴史的必然のストーリーを読み解く著者の野心作である。長い時間の彼方から私たちの時間にやって来た生物たちの命の鼓動が聞こえて来そうだ。

 お薦め度:★★★  対象:生活を愛するすべての人に

【和田岳 20040817】
●「海をわたる蝶」日浦勇著、蒼樹書房

 イチモンジセセリ、ウラナミシジミ、モンシロチョウというごく普通の3種を中心に、渡りや迷行を含めたチョウの移動の謎について解明しようとする内容。イチモンジセセリの大群の出現の話からはじまり、移動性の高いチョウと低いチョウの比較。さらには、渡ってくるチョウの供給源であるフィリピンに赴き、都市化による蝶相の変遷を調べ、生物地理学から話は氷河時代にまで及びます。
 正直、研究内容という面では、今読んでも目新しさはありません。むしろ、アマチュアや今から研究を志す人が、研究ってどんなものかを知る手がかりになる本でしょう。

 お薦め度:★★  対象:今から研究をしてみたい人、あるいは研究ってどんなものか知りたい人

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