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本の紹介「海のクワガタ採集記」

「海のクワガタ採集記 昆虫少年が海へ」太田悠造著、裳華房、2017年7月、ISBN978-4-7853-5124-3、1500円+税


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【森住奈穂 20171221】【公開用】
●「海のクワガタ採集記」太田悠造著、裳華房

 ウミクワガタとは甲殻類の仲間。甲殻類は寄生生活に特化した分類群が多いそうだ。人目につくエビ・カニは氷山の一角とのこと。ウミクワガタも寄生性。生涯に3度だけの食事の際に、魚の体表や鰓などに取りつき体液を吸う。クワガタムシのような大アゴは繁殖場所やメスを守るためのものなのだそうだ。昆虫少年だった著者は、虫採るために琉球大学へ進学。海の生物にも興味が広がったところで、「昆虫と海洋生物を両方できる感じ」のウミクワガタに出会う。採集の苦労話、新種記載の苦労話、軟骨魚類に寄生する巨大種(通常:ゴマ粒、巨大種:米粒)飼育の苦労話。どれもとっても楽しそう。そして、ウミクワガタの真っ白なぬいぐるみを持って写真に収まる著者。自作とのこと!そのことにも驚いた。

 お薦め度:★★★★  対象:知らない、見たこともない生きものを見てみたいひと


【萩野哲 20171026】
●「海のクワガタ採集記」太田悠造著、裳華房

 甲殻類は昆虫ほどでなくても大所帯であり、メジャーなエビ・カニ以外に当然、中にはとんでもないヤツらがいる。大きさと頭部以外を見なければほとんどクワガタムシのような形態の「ウミクワガタ」もそのようなヤツらの1群だろう。ウミクワガタは生態も変わっていて、一生の間にたったの3回だけ魚の体表や鰓に寄生して吸血し、クワガタのような成体になるのだ。成体は餌も食べずに繁殖に専念するだけだ。そのようなヤツらでもサンゴ礁や干潟や、更には純海水でもない地下水脈にいたりして、その生態からはハテ?と思うような事実もある。元々陸上のクワガタにも大いに興味を持っている著者がその採集技術?を駆使して集めたウミクワガタは50種を超える見込みらしい。海の掃除屋として有名なホンソメワケベラが食べている魚の寄生虫は、実はこれらウミクワガタの幼虫が多くを占めているようだ。存外ウミクワガタもマイナーな存在ではないのかもしれない。著者のウミクワガタへの愛が語られて楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:マイナーと思われている生物にも興味を持てる人


【和田岳 20171220】
●「海のクワガタ採集記」太田悠造著、裳華房

 昆虫大好きな学生が、海洋生物の研究室に入ってしまい、上半身だけクワガタムシに似た甲殻類ウミクワガタを研究することになった。で、ウミクワガタなどマイナー甲殻類と、ウミクワガタ研究を紹介した一冊。
 第1章はマイナー甲殻類の紹介。聞いたこともないグループが次々と出てくる。変な動物が好きな人にはおすすめ。第2章でようやくウミクワガタが主役になる。ウミクワガタの紹介からはじまって、著者の研究の経過が紹介されていく。最初はウミクワガタを採集できずに困っていたのが、いろんなきっかけで思いがけない場所で採集できるようになり、次々と新種が見つかり、生態が明らかになっていく。とても面白い。第3章は、著者の研究生活の苦労話とぼやき。マイナー生物群を研究する悲哀はただよってくるけど、第3章いらんから、第2章をもっとふくらませばいいのに。

 お薦め度:★★★  対象:海のクワガタって虫?と思った人


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