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本の紹介「ウミガメ博物学」
「ウミガメ博物学 砂浜とウミガメとヒトのはなし」亀崎直樹著、南方新社、2024年10月、ISBN978-4-86124-521-3、1800円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【ケンタロウ 20250822】【公開用】
●「ウミガメ博物学」亀崎直樹著、南方新社
筆者を中心とした数々の写真から始まり、砂浜、ウミガメ、ウミガメと人と関わりについて、謎多きウミガメの生態やその調査、保護に取り組んだ人々にまつわる話を第1章から第4章までの55話に分けて紹介されている。
第1章は、砂浜のはなし。第2章、ウミガメのはなし。第3章は、ウミガメとヒトのはなし。第4章 鹿児島のはなし。
人の営みによってウミガメにとって大事な砂浜を壊してはいけない。筆者のウミガメ感を知りたい人はぜひ読んでみるといい。
お薦め度:★★★ 対象:筆者のウミガメ感を知りたい人
【西本由佳 20250620】
●「ウミガメ博物学」亀崎直樹著、南方新社
砂浜はもともとがあまり安定した環境ではないようだ。砂は波に削られ、運び込まれ、そのバランスで存在する。川や沿海に人の手を加えることで、そのバランスは簡単に崩れてしまう。ウミガメを砂浜で見かけるのは産卵のときと孵化のとき。砂浜があればどこでもというわけではないし、砂浜の温度で子ガメの性が決まってしまうという。そしてウミガメの生態はまだ謎が多い。そんなウミガメのデータを積み重ねてきたのは地元の人たち。その方法は体系だった手法というより、ひたすら熱意とその伝播。損得や効率ではなく、好奇心、ウミガメかわいさ、ウミガメがいる環境への愛着。また、伝統的にウミガメや卵を食べてきた人たちの話も。その人たちだって、ウミガメがいなくなってほしいわけではなく、それなりのルールはあった。ウミガメを守るために、いちばん近くにいる人たちの行動が必要なら、民俗学(なのかな?)的な視点も必要になってくるのかもしれない。というか、純粋理系科学者にこのカオスなデータ採集環境が耐えられるのだろうか?博物学という懐の広い学問の役割はまだまだあるということか。
お薦め度:★★★ 対象:ウミガメにずっと日本の海に来てほしいなと思う人
【萩野哲 20250614】
●「ウミガメ博物学」亀崎直樹著、南方新社
ウミガメを熟知した著者が語るウミガメの自然史。本書の章立てでもわかるように、著者はウミガメ、砂浜、ヒトの三軸でとらえている。第1章は、いかに砂浜がウミガメにとって大切な環境かを訴え、その喪失を憂う。砂浜は不安定な環境であり、港の整備など、浅はかな人の知恵で痩せる。ウミガメは生まれた場所に産卵に帰るより、卵の安全に最適なグンバイヒルガオやハマヒルガオが生える不安定帯からハマゴウなどが生える半安定帯を指標に産卵するのである。第2章はウミガメの諸々を紹介している。砂の色などでも性の偏りが起こってしまう温度依存性決定(TSD)はなぜ進化したか、とても不思議。一方、ウミガメが深く潜り、気圧がかかると心室の弁が開く2心房1心室の心臓は実に機能的。第3章はヒトとの関係。話題は多岐にわたるが、読者は“そうだったのか!”と気付くことも多いだろう。著者の言う博物学が学問でなくても、ウミガメの実際が探求できるのなら、それでいいだろう。
お薦め度:★★★ 対象:ウミガメを博物学の面から知りたい人
【和田岳 20250626】
●「ウミガメ博物学」亀崎直樹著、南方新社
長年ウミガメに関わってきた著者が、砂浜、ウミガメ、ウミガメに関わる人々をつづった本。第1章は、砂浜について。鳥や海浜植物とは少し違ったウミガメ目線が面白い。第2章は、ウミガメについて。おもに紹介されるのはアカウミガメ。孵化した子ガメが太平洋を横断し、再び日本近海への戻ってくるようだが、まだまだ謎は多そう。第3章と第4章は、ウミガメと人の関わり。子ガメの放流の問題点、ウミガメ調査を頑張る各地のグループ。著者も食べてる、ウミガメは美味しそう。
あとがきにこんな一文。「あえて述べるなら本書は学術書ではない。私の憶測や聞き取りによるところは多い。それを加味して私の感じているウミガメ感を皆さんに知らせたいと思った」。ウミガメの科学を知りたければ他の本を読む方がいい。と著者が書いている。
お薦め度:★★ 対象:市民科学の対象としてのウミガメ研究を知りたい人、長年ウミガメに関わってきた人の想いを読みたい人
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