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本の紹介「土と生命の46億年史」

「土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る」藤井一至著、講談社ブルーバックス、2024年12月、ISBN978-4-06-537838-0、1200円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【西村寿雄 20251217】【公開用】
●「土と生命の46億年史」藤井一至著、講談社ブルーバックス

 はじめに「人類繁栄のカギは土にある」と書かれている。なるほど。土が元で土壌が生まれ生物も人類も生きてきた。まさに土があるからこそ生命も芽生え繁栄してきた。最初のカラーページを見ると、人類の繁栄は土にあることががよくわかる。約5億年前に土がうまれ、・・と今に至っている。 本文では、まず「土とはなにか、粘土とははにか」が論じられ、その中でケイ素の重要性を指摘している。もちろん酸素、アルミニウム、マグネシウムなどの元素も加わり土を作っているという。やがて粘土と砂は生物の棲み家になり、土壌が生まれ、多様な生命の進化をもたらした。後半では、各地のいろいろな土と人類がいかに関わっているかくわしく論じている。「46億年の歴史は、土こそ私たちの生命と文明を生み出した基礎である・・。と結んでいる。

 お薦め度:★★★  対象:生命と土の関連を知りたい人
【萩野哲 20251213】
●「土と生命の46億年史」藤井一至著、講談社ブルーバックス

 土は人工的に作れないと著者は言う。生命もそうだ。生命の原料(アミノ酸や核酸)の由来については諸説あるが、著者は、土の構成要素である粘土の遺伝情報伝達・再生能力を持つ層状構造並びに粘度を基質としてそれらの原料は合成され、生命の誕生に至ったと考える(粘土鋳型説)。その後の生命の進化は、細菌では光合成能力の獲得、古細菌では細菌などの取り込みによる真核細胞→多細胞生物の誕生から更に植物、菌類、動物への分化と続く。そして、それらの重要な局面で、土が電気的あるいは分子的な環境で進化をサポートしてきた。過去5億年の間変動してきたシステムの進化は今も続いており、この歴史的な重みが土を人工的に作れない理由となっているのだ。常に基質として生物の傍らにあった土の、進化への関与はあながち著者の手前味噌とは言えないだろう。

 お薦め度:★★★★  対象:土と進化は関係あるの?と思う人
【森住奈穂 20251219】
●「土と生命の46億年史」藤井一至著、講談社ブルーバックス

 土の研究者による地球と生命の46億年史。土は岩石の風化と生物遺体由来の腐食とでできているから、地球の歩みそのものということか。まず粘土ができ、触媒となって生命が誕生。そこから腐食も生まれるが、この腐食の正体が未だ解明途中であるため、現状、土は「非」再生可能資源なのだそうだ。第3章では植物が、第4章では動物が登場するが、土の研究者ならではの視点が面白い。大多数が未知である微生物の働きと、無数の鉱物との相互作用でできている土。複雑さ、すごさがよく伝わる。

 お薦め度:★★★  対象:土の奥深さを知りたいひと
【和田岳 20251219】
●「土と生命の46億年史」藤井一至著、講談社ブルーバックス

 土の研究者による生物進化の本。当然ながら土と生物進化の関わりが主題で、物質循環の視点でみることになり、生態系進化の話になり、文明論に行き着く。
 生命より前にまず粘土。から始まって、粘土は生命誕生に大きく関わったという仮説を紹介。陸上に生物が進出して土壌が形成されるストーリー。粘土と微生物で腐食が形成され、5億年前頃に植物が陸上進出することができ、さらに土壌が形成されていった。それから約1億年遅れて、動物の上陸。陸上のナトリウム不足への対応、老廃物アンモニアの排出と窒素循環、大気中の二酸化濃度の変動。物質循環の影響を様々に受けつつ、陸上動物が進化してきたというストーリーが描かれる。人類の進化、そして文明の発展、とくに人口増と物質循環の関わりでは、リン不足の問題が注目される。
 結局のところ、現時点では、人類は生命と土はつくれないらしい。しかし、土がないと月や火星や宇宙で長期間人類が暮らすこともできない。将来の宇宙進出のためにも、土の研究は重要である。と書くかと思ったらそうでもなかった。
 土や物質循環をキーワードに生態系の進化が描かれていて、楽しく読める。ただ、諸説あっても都合のいい仮説を紹介しているようだし、我田引水感が強め。すべてを鵜呑みにはしない方がいいかなと思った。

 お薦め度:★★★  対象:生命進化と土との関わりを考えてみたい人
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