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本の紹介「次の巨大地震はどこか!」

「次の巨大地震はどこか!」宍倉正展著、宮帯出版社、2011年8月、ISBN978-4-86366-810-2、1200円+税


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【萩野哲 20111221】【公開用】
●「次の巨大地震はどこか!」宍倉正展著、宮帯出版社

 地震は予知できるか?著者は@いつ、Aどこで、Bどれくらい、の3要素が必要であるという。それでは、これらはどの程度予想できるのだろうか?まず@。500〜1000年に1回かどうかの長期予想は可能だが、具体的にいつかの短期予想は無理である。次にA。地殻のひずみ場所はわかるので、地震が起こりやすい場所はわかる。最後にB。規模については過去の経験からは予想できず難しい。
 古地震学により、過去の地震の規模を解明することができる。Aから、南海トラフを震源域とする東海地震、東南海地震、南海地震は今世紀中に必ず起きると言えるのだろう。しかし、周期的に起きるとはいっても500〜1000年に1回かどうかの確率である。1年後やら100年後やら分からないのに“予知”というのは無理があるのではなかろうか?日本には地震が起こりやすい場所は無数にあり、また比較的大きな地震が頻発しているので、起こった地震は予知されたのか、偶然起こったのか、判定できない。「やっぱり地震予知は困難だ」との読後感を植え付けるいらだちの1冊である。

 お薦め度:★★  対象:地震予知に期待をかけている人以外

【中条武司 20111221】
●「次の巨大地震はどこか!」宍倉正展著、宮帯出版社

 津波や液状化した堆積物、段丘などの地形変動を解析し、過去の地震の規模や周期を調べる研究を「古地震学」と呼ぶ。王道の「地震学」からは異端視されているこの研究が、今回の東北地方太平洋沖地震ではにわかに脚光を浴びている。著者らのグループが行っている過去の津波堆積物の研究が、今回の地震を予見していたからだ。1000年以上前の貞観地震津波堆積物が今回の津波浸水域とほぼ重なることや、同様の津波堆積物がそれ以前の地層からも見つかることがわかったのだ。それを受けて北海道東部、南海トラフ周辺などの津波堆積物の研究も、地震被害想定の際に考慮されるようになりつつあるようだ。王道から外れていると思われている「古地震学」がクローズアップされることはとてもうれしいことではあるが、それが大きな被害を受けた上での評価というのが残念でならない。なお、第二部は蛇足ですね。

 お薦め度:★★★  対象:もう大きな地震は来ないと考えている人たちへ

【西村寿雄 20111219】
●「次の巨大地震はどこか!」宍倉正展著、宮帯出版社

 2011年3月に東北沿岸に起きた大地震と大津波について、一時「想定外の大地震と大津波」と報道された。しかし、実際には著者達の研究でかなり以前からこの大地震と大津波は予想されていた。地層に刻まれている地震や津波の痕跡を調べる手法で1000年に一度の大津波の警告が東北沿岸に出されていた。その声が徐々に広がりつつある中での大震災だったことがこの本ではくわしく書かれている。今の地震学では、海溝付近を震源とする地震についてはある程度の周期性を根拠に、次の地震が予想できる段階になっている。そのことを根拠に、関東地方や東南海地方の次なる地震の予想も書かれている。串本にある橋杭岩周辺に散らばる大きな岩から南海地震の周期も読み取れるなどユニークな研究も紹介されている。次はいつ、どこで大地震が起きるのか気になる人には必読の書であろう。

 お薦め度:★★★  対象:大地震が心配で眠れない人

【村山涼二 20111219】
●「次の巨大地震はどこか!」宍倉正展著、宮帯出版社

 著者らは貞観地震(869年)という古地震の津波堆積物を調査研究することにより、津波の高さ到達の規模を明らかにし、巨大地震津波被害の再発の可能性を明らかにしていた。同様な調査により北海道太平洋沿岸にも危険性を予測し、房総半島南東沖を震源とする関東地震も予測している。東海・東南海・南海地震にも触れている。著者はスマトラ島沖やチリ地震の調査にも係わっている。津波堆積物の調査研究の地震津波の予知・対策への重要性がよく理解できる。

 お薦め度:★★  対象:地震・津波の予知・対策に関心のある方へ

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