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本の紹介「土 地球最後のナゾ」

「土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて」藤井一至著、光文社新書、2018年8月、ISBN978-4-334-043681-1、920円+税

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【森住奈穂 20181221】【公開用】
●「土 地球最後のナゾ」藤井一至著、光文社新書

 土壌学が専門の著者。100億人を養ってくれる肥沃な土を探すため、12種あるという世界の土を求めて冒険がスタート。しかし、めっちゃ地味。遭遇する野生生物は蚊やジリス。メガネの裏に入り込まれたり、ランチのサンドイッチを奪われたり。確かにイヤやけど。第3章に出てくる2種の地図、「世界の肥沃な土マップ」と「人口密度と降水量の分布図」を見ると、土が良くても水が無ければ、水があっても土が貧栄養では多くの人口を養えないことがよく分かる。カネの力で水や肥料をジャブジャブまけば、不毛とされていた土地も大規模農業が可能になる例が紹介されるが、著者はスコップでできることを探し追求している。気候風土によって長い時間をかけて形成されてきたその土は、それぞれに性格が異なるから難しい。そして現代の私たちは世界中の多様な土とつながっており、自分がどんな土に生かされているのか関心を持って欲しいと語っている。

 お薦め度:★★★  対象:土はあって当たり前だと思っているひと
【萩野哲 20181215】
●「土 地球最後のナゾ」藤井一至著、光文社新書

 土は12種類しかないことは150年も前にわかっているらしい。何がナゾなのか?本書を読み進めてみると、確かにわからない(専門家の著者も悪戦苦闘しているくらいだから、素人にわからないのは仕方ない)。12種類といっても、動的に変化するものらしい。土の成り立ちには水分や気候、元の植生、それに人間の活動も作用する。だから100億人を養うことができる土壌を探し、改変し、改良することが可能なのだ。それにしても、著者が土は地味で研究者の扱いも低いと嘆く反面、土にまつわる用語の多さには改めて感心した。

 お薦め度:★★★  対象:難しい土を無理に理解しようとせずに、写真の多さを単純に楽しみたい人
【西村寿雄 20181219】
●「土 地球最後のナゾ」藤井一至著、光文社新書

 100億人を養ってくれる肥沃な土を求めて、スコップ一つで日本各地や世界各国をめぐりめぐって集めたという土壌報告レポートである。行く先々の小ネタ情報やジョークも交えて肩の凝らない読み物になっている。まずは「土壌」の定義から「土」の特徴を語っていく。色や粘土の違いなどから「ボドゾル」「黒ぼく土」「泥炭土」など世界の土を12種類に分類して、「12種類のすべての土を見たい」という夢をいだいて世界をかけまわる。まずは大学の裏山から土採集を始めるが、やがてポゾドル」や「永久凍土」「泥炭土」を求めてフィンランドへ。地味な土の研究では調査許可が出るのも大変だったとか。カナダやタイ北部、北欧などと調査は続く。もちろん「黒ボク」など日本での調査報告も多い。読みやすいのは、それぞれの土の色や植物生育状況のほかに土壌イオンの話もおり交ぜられているので理解しやすい。土と作物との深い関係が読み取れる。

 お薦め度:★★★  対象:世界の土と農作物に関心のある人
【六車恭子 20181220】
●「土 地球最後のナゾ」藤井一至著、光文社新書

 世界の土はたった12種類しかないという。スコップ片手に、それを確かめに行脚した記録でもある。100億人の胃袋を養える土壌は果してどこにあるのか?
 土の王さまはチェルノ一ゼム、酸性でもアルカリでもないこの土は世界のカリウム肥料の30パーセントを産出している。植物遺体が体積してできる泥炭土は通気性を改良するピートモスとなり、ウイスキーの芳醇な香りのもとにもなる。地中深く眠れば石炭にばけるらしい。
 世界で最も貧栄養なボドゾルは老朽化した白い砂だ。ジャガイモ栽培か林業の二者択一しか残されていないという。
 亜熱帯や熱帯には最も農業に適しているのは粘土集積土壌が、塩辛い砂漠土の民は遊牧という選択肢しかない。
 さて日本の黒ぼく土は腐植の多い肥沃な土の証しだという。縄文時代から積み重ねられてきた贈り物!
 土を求めて世界をめぐって、裏山の土の成り立ちの基礎研究がにわかに重みを増す。100億人の胃袋を満たす宝の地図はここから始まる。

 お薦め度:★★★★  対象:日々の食卓から世界を覗きたい人なら
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