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本の紹介「となりのクリハラリス」

「となりのクリハラリス たくましい開拓者から学ぶこと」田村典子著、東京大学出版会、2025年8月、ISBN978-4-13-063965-1、3000円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【和田岳 20251219】【公開用】
●「となりのクリハラリス」田村典子著、東京大学出版会

 長年リス類の分類と生態を研究してきた著者が、クリハラリスを中心に分類、感覚世界と行動、日本の外来クリハラリスの問題を紹介する。
 クリハラリスが含まれるグループは、分類と和名が錯綜していて、とてもややこしい。リスにはさまざまな毛色があって、毛色に基づいてクリハラリスとフィンレイソンリスに分けられていたのが、毛色では2種を区別できないことが判明。そもそもリスは二色視で、リス自身は灰褐色と赤褐色を区別できない…。赤い果実も喰わない。クリハラリスは音声コミュニケーションが発達していて、同じ個体群の同種の声に一番反応する。一方、ニホンリスは小声しか出さない。ニホンリスには、タンニンへの耐性がほとんどなく、ドングリは喰わない。リスのことがいろいろ判る。オニグルミの喰い方が、ニホンリスとクリハラリスで違うとは知らなかった。かつてタイワンリスと呼ばれていたリスを、どうしてクリハラリスと呼ぶのが妥当なのか。ようやく理解できた。

 お薦め度:★★★★  対象:リスについて知りたければ
【里井敬 20251218】
●「となりのクリハラリス」田村典子著、東京大学出版会

 クリハラリスはタイワンリスと呼ばれていたことのある、南方系の外来リス。放獣されたり、そこから広がって生息しているので、太平洋側の都市部を中心に分布している。大阪城にも放獣されたらしいが、今もいるのだろうか?
 リスは赤は識別できなくて、黒い果実を好んで食べる。熟成が進むと黒くなるのでそれを選んでいる。土に埋めて貯食した実は匂いではなく記憶で探し当てる。ドングリはタンニンを含むので、ニホンリスは苦手だがクリハラリスは平気だ。逆に針葉樹のテルペン類の香をクリハラリスは苦手でニホンリスは食べる。クリハラリスは柑橘類やツバキの多い地域で分布を増やしている。今後クリハラリスが増えて農業や林業に被害が出る心配がある。

 お薦め度:★★★  対象:公園のリスについて知りたい人
【西本由佳 20251214】
●「となりのクリハラリス」田村典子著、東京大学出版会

 リスは意外にも赤い実が見えていないという。視覚が二色型で赤と緑は見分けられない。森の中であれだけ目立つ実を利用せずにいることは、他の鳥たちとの共存を可能にしているのだろうか?聴覚としては、小鳥たちの警戒声にリスも同じように反応するという。他の生きものと協力しているわけではないだろうけど、それなりに存在を気にしているようだ。味覚としては、在来のリスはタンニンにあまり強くなく、「コナラやミズナラは日本で最も優占する植物種といってよい。これを餌として利用できるのは外来種のリス類であり」ということ。ニホンリスは針葉樹の実を好む。地球温暖化で、狭い生息域がさらに狭まることが懸念される。表題のクリハラリスとはタイワンリスのこと。雑食で人なれしやすいことから愛玩動物として公園に放され、野生化した。連れてこられた彼ら罪はないけれど、在来のリスの生息を脅かすことが懸念されている。ただ、生きものとしての彼らはたくましく魅力的。となりにすむ生きものとして見守っていきたい。

 お薦め度:★★★  対象:リスってどんな生き物かと気になるなら
【萩野哲 20251213】
●「となりのクリハラリス」田村典子著、東京大学出版会

 クリハラリスの原産地は広域(インド東部〜台湾、中国〜タイ)で、雑食の傾向が強く、年中繁殖し、高密度になりがちな種である。日本には1950年頃、家庭の愛玩動物、観光資源として輸入されたが、在来動植物に多大な影響を与える(鳥類の雛や卵・昆虫の捕食、樹皮剥がしなど)ことがわかってきた。特に日本在来の、針葉樹などの狭い植生に適応してきたニホンリスにとって、その存在は深刻だ。このため、2005年に特定外来生物に指定されているが、現在4都道府県、19か所で野生化しており、今後、局所的または一時的な定着で済むか、全国的に分布を広げるか、瀬戸際の状況らしい。本書はリス類の視覚、聴覚、味覚、人との関係などを比較しながら、クリハラリスのたくましさを認識するとともに、安易に外来生物を導入するとどんなことが起こるのかを学ぶよい一例を提供している。この魅力的な動物を捕獲・殺処分しなければならないような事態を今後繰り返さないよう、皆が深く理解し、模索し続けることが重要なのだ。

 お薦め度:★★★★  対象:クリハラリスを通じて外来生物問題を考えたい人
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