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本の紹介「鉄は魔法つかい」

「鉄は魔法つかい 命と地球をはぐくむ「鉄」物語」畠山重篤著、小学館、2011年6月、ISBN978-4-09-227152-4、1300円+税


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【西村寿雄 20110821】【公開用】
●「鉄は魔法つかい」畠山重篤著、小学館

 著者の畠山さんは、東北気仙沼のカキ漁師である。畠山さんは、今までの経験から湾に流れ込む川の上流部の山が広葉樹に包まれているとカキの生育がよいことをつきとめていた。以来、「森は海の恋人」を合い言葉に「漁師による森つくり」運動を展開していた。海外でもその例のあることを知り、ますます、豊かな森と豊かな海と深いつながりがあることに自信を持った。1990年、「植物プランクトンや海藻はフルボ酸と結びついた鉄分子から鉄を吸収する」「そのフルボ酸は広葉樹の腐葉土によって生まれる」という研究成果を知り、森と海との強いつながりに確信が得られることになった。
 近年は、海と森のつながりを総合的な科学として「森里海連携学」を立ち上げる大学も現れた。畠山さんはその研究者の一端を担っている。こうした畠山さんの長年の森づくり運動の経過がこの本に盛りこまれている。今回の震災をもろに受けた畠山さんに、一からの出発がまた始まった。

 お薦め度:★★★  対象:海と森のつながりに興味のある中学生以上

【萩野哲 20110822】
●「鉄は魔法つかい」畠山重篤著、小学館

 三陸沿岸でのカキ養殖を営む著者は3月11日の津波により養殖場を全部流されるなどの被害を受け、海の生き物の姿も消えてしまった。しかし、1か月ほどして海が澄み始め、小魚も戻り始めた・・・。
 本書は、生き物にとって鉄がいかに大切なものか、平易に解説している。カキ養殖の場合も、その餌となる植物プランクトン発生などに鉄が関わっている。その鉄は森の奥から川を通じて海に供給されている。「森には魔法使いがいる」。著者は因果関係を知らぬまま、森に木を植える活動を始めていたが、北海道大学の松永先生から教えられ、その魔法使いが「鉄」であったことを確信する。森が健全ならば海は回復する!! 著者のバイタリティーならカキ養殖は回復できると思うが、できるだけ早い復興を願わずにはおられない。

 お薦め度:★★★  対象:“陸“と”海“との関連に興味を持ってほしい全ての人

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