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本の紹介「タコ・イカが見ている世界」

「タコ・イカが見ている世界」吉田真明・滋野修一著、創元社、2025年4月、ISBN978-4-422-43063-8、1800円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【森住奈穂 20250627】【公開用】
●「タコ・イカが見ている世界」吉田真明・滋野修一著、創元社

 タコ・イカの大きな頭と思慮深げな目、いったいどんな知性が宿っているんだろう。寿命は一般に1年ほど。それなのに高い知能を感じさせる理由は、神経細胞がものすごく多く、複雑な情報処理を行えるから。タコは腕一本ずつと頭、計9つの脳を持っているそう。本書は見開き2頁で一つのトピックを紹介する形式。著者が専門とする最新のゲノム研究の章もある。タコは全遺伝子の60%以上でRNA編集を行なっていることが判明し、今後の応用が期待されているらしい。美味しいだけじゃなく研究対象としても有用なタコ・イカ。知性について解き明かされればされるほど、食べることには気が引けてしまう気がする。

 お薦め度:★★★  対象:タコ・イカの心が気になるひと
【西村寿雄 20250624】
●「タコ・イカが見ている世界」吉田真明・滋野修一著、創元社

 小学校高学年児から読める。タコ・イカは〈変わり者〉という。何が〈変わり者〉なのか。そもそもタコやイカに心や感情があるのか。この本にはそうした最先端の研究が書かれていて興味深い。「タコやイカの心の中」では鏡にタコを写す。するとタコはいろいろ違った反応を見せる。このことから「タコには意識がある」と。はるか昔この「意識」は人の祖先にも伝わりそこから進化したという。タコの中には〈社会性〉に富む種もおり、機敏に体を制御する頭脳もあるという。そうか、タコも人間も同じか。タコ・イカの話が満載されている。

 お薦め度:★★★  対象:動物好き子どもから
【萩野哲 20250614】
●「タコ・イカが見ている世界」吉田真明・滋野修一著、創元社

 人類とは全く異なる形態、生態の頭足類の実態が明らかになるにつれて、両者の比較方法も進歩した。知能の高さの基準や知能の階層についての共通点もわかってきた。眼の構造の発達についても、従来オウムガイのようなピンホール眼からイカ・タコのようなレンズ眼が発達してきたと考えられてきたのが、遺伝子の解析から、実はオウムガイの眼は退化した結果であるとわかってきた。RNA編集の項も面白い。残念ながら、色覚がない頭足類がなぜ多彩な色素を持つのか、答えは未だ出ていないようだ。更に、頭足類専門外の者でもわかる誤りが多過ぎる。例えば、“中生代の石炭紀からペルム紀…”、“恐竜大絶滅の影響で…絶滅した海洋生物…”など。これなら、専門分野外の初聞きした内容にも誤りがあるのではないかと勘繰ってしまうではありませんか。

 お薦め度:★★  対象:頭足類の研究最前線の概要を知りたい人
【和田岳 20250625】
●「タコ・イカが見ている世界」吉田真明・滋野修一著、創元社

 長年、頭足類が研究してきた2人が、タコ・イカの知性とゲノムを中心に、タコ・イカの形態と進化を紹介した一冊。
 第1章は、タコ・イカのおもに形態の説明。3つの心臓、9つの脳、巨大軸索、発光、感覚器でもある吸盤。他の本ではあまり見かけない話題が豊富。第2章は、タコ・イカの知性と心の話題。ヒトとは全然違う構造の脳を持ちながら、ヒトと同じような知性の階層や体地図を持ち、痛みを感じ、酔い、麻酔が効き、ドラッグで興奮する。タコの活け作りはもう喰えない。第3章は、タコのゲノム研究の紹介。第4章は、頭足類と人類。と称して、なぜか頭足類研究の歴史が綴られる。
 全体的に、いろいろ興味深い話題が並び、とても勉強になる。が、結局、知性もゲノムも研究はまだ発展途上という印象が強い。

 お薦め度:★★★  対象:タコ・イカ、とくにその知性に興味がある人
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