友の会読書サークルBooks

本の紹介「大陸と海洋の起源」

「大陸と海洋の起源 大陸移動説」(上・下)ウエーゲナー著、岩波文庫、1981年10月、(上)ISBN4-00-339071-7(下)ISBN4-00-339072-5、(上)350円(下)400


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【西村寿雄 20150414】【公開用】
●「大陸と海洋の起源」ウエーゲナー著、岩波文庫

 ウェーゲナーの大陸移動説はウェーゲナーの死後30年たった1960年代ころからにわかに脚光をあびた。岩石磁気の研究から大陸移動の証拠が解明され、海洋底拡大の動きなども明らかになったからである。その後、プレートテクトニクス論が展開され大陸移動の原動力も解明された。『大陸移動説』は地球物理学の幕開けの理論として或いは不屈な科学者の研究物語として、他にも多く翻訳出版されている。
 岩波文庫のこの本は、ウェ―ゲナーの『大陸移動説』第四版を翻訳されたもので大陸移動説研究の経緯が詳細に記されている。この本の出版前に、ウェゲナーは北アメリカとヨーロッパ間の距離が増えているという情報を知り、この本の最後に大陸移動の証拠として付け加えている。同名の訳本は竹内均訳(講談社学術文庫)にもある。

 お薦め度:★★★  対象:大陸移動説の全貌を知りたい人

【中条武司 20150624】
●「大陸と海洋の起源」ウエーゲナー著、岩波文庫

 地質学分野での歴史的名著といわれるこの本を、恥ずかしながら今まで読んだことがなかった。とはいえ、「大陸は移動する!」っていう出落ちな本かと思っていたのだけど、なんのなんの。有名な地質学的、古生物学的な考えだけでなく、当時の最先端の地球物理学や岩石学的な考え方も交えて、大陸が移動したことを説明しようと試みる。もちろん間違っている部分や強引な論理展開もあるけど、現在でも通用する考えも数多く残っている。これが数十年も闇に葬られていた理由が逆にわからない。下巻巻末には、ヴェゲナーの主張とこの本が出版された1981年当時の地質学との比較が述べられていて参考になる。

 お薦め度:★★★  対象:地質学の歴史を学びたい人、地球科学の発展過程を知りたい人
【萩野哲 20150414】
●「大陸と海洋の起源」ウエーゲナー著、岩波文庫

 ウエーゲナーはプレートテクトニクスの嚆矢として大陸移動説を唱えたことで知られるが、生前は全くその説が認められず不遇な人生を送ったと紹介されることが多い。しかしその著作を実際に読んでみると、当時の測地学、地球物理学、地理学、古生物学等の知見から、かなりの確度で大陸が動いたとの証拠を挙げており、それほど不遇でもなかったのでは、と思った。もちろん今から見ると間違いもあるが、それは当時の学問分野の未熟さ、情報の乏しさによるものであった。自分の専門にとらわれず、多くの学問分野の切り口から地道かつ大胆に、ヒラメキから始まった仮説を検証していく彼の姿勢は、やはり偉大な先人であったと思わずにはいられない。

 お薦め度:★★★  対象:古典のすばらしさに触れたい人

【森住奈穂 20150625】
●「大陸と海洋の起源」ウエーゲナー著、岩波文庫

 1910年、世界地図を眺めながら大西洋の両側の大陸の海岸線の出入りに「深く印象づけられた」ウェゲナーは、1915年に本書初版を上梓後、50歳で亡くなる前年発行の第四版まで、測地学、地球物理学、地質学、古生物学、動物地理学、植物地理学、古気候学を徹底的に調べ上げ、自説のために戦い続けた。ウェゲナーの死後、大陸移動説は暗黒時代を迎えるが、数十年を経て観測技術の発展により劇的な復活を遂げる。本書訳者の竹内均さんは、はしがきで「地球科学の進歩のいずれもが、さかのぼってはウェゲナーの卓抜なアイデアの中にその源をもっている」と述べている。本書は第四版の訳である。各章ごとに竹内均さんの補足・解説が付されており、ウェゲナーの着想がその後どのように発展したのかを知ることもできる。

 お薦め度:★★★  対象:地球科学に興味があるひと

[トップページ][本の紹介][会合の記録]