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本の紹介「睡眠の起源」
「睡眠の起源」金谷啓之著、講談社現代新書、2024年12月、ISBN978-4-06-537796-3、900円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【森住奈穂 20250627】【公開用】
●「睡眠の起源」金谷啓之著、講談社現代新書
著者は現役の大学院生。1998年生まれの若者である。山口県の自然豊かな地で、幼稚園の頃から研究者を志していたという。本書は「脳をもたないヒドラも眠る」、「ヒドラの眠りのメカニズムは、ショウジョウバエや哺乳類など他の動物と共通している」という新発見誕生の経緯を軸に、睡眠研究の歴史や最新情報が紹介されている。「生物は眠っている方がデフォルトで、起きている方が特別である」という論説には目からウロコ。睡眠大事!そして不思議!詩情さえ感じる豊かな文章に舌を巻くとともに、大学4年生で上記成果を出した著者の研究が、今後どのように展開されてゆくのか、楽しみだ。
お薦め度:★★★ 対象:眠りに興味があるひと
【里井敬 20250423】
●「睡眠の起源」金谷啓之著、講談社現代新書
ラットを長時間断眠させると死んでしまう。プラナリアは12時間暗所で、12時間明所で飼わないと調子が悪くなる。24時間周期で生きているのはヒトだけではない。DNAの時計遺伝子が24時間の体内時計をカウントしている。
ヒドラに神経系はあるが脳はない。それでも1日に何度も動かなくなる時がある。ショウジョウバエの睡眠をコントロールする遺伝子と共通の遺伝子が、ヒドラに存在する。ヒドラの眠りのメカニズムは、ショウジョウバエ、ひいては哺乳類とも共通している。ヒトもヒドラも共通して眠る。睡眠は脳で起きる現象ではないらしい。覚醒している時に『意識』があるのなら、ヒドラにも『意識』はあるのか。『意識』は進化の課程のいつ生じたのか。眠りと意識についての研究に発展していくのか。
お薦め度:★★★★ 対象:睡眠について深く知りたい人
【萩野哲 20250628】
●「睡眠の起源」金谷啓之著、講談社現代新書
そもそも、なぜ私たちは眠るのか? ヒトは人生の1/3を眠って過ごす。睡眠とは何か?トブラーは「可逆的な行動の静止」、「特徴的な姿勢」、「反応性の低下」、「眠りのホメオスタシス」がこの現象を特徴付けると提唱した。睡眠は@「睡眠圧」(眠らせようとする力)とA「体内時計」(起こそうとする力)で調節されており、眠気は@−Aの関係である。だから、寝だめは意味がない。断眠も脳への悪影響のみならず、多臓器不全から死に至る場合もあるらしいのでやめた方がいい。エジソンの考えは誤りなのだ。
睡眠は脳で起こっている現象と考えるのが自然であるが、脳のないヒドラでも繰り返し行う動かない状態は可逆的でありホメオスタシス性もあるので、睡眠とみなされる。どこまで睡眠の進化(起源)は遡れるのだろうか? 実は睡眠状態から覚醒が進化したのか? 更に意識とは? 今後の著者の活躍に期待しよう!
お薦め度:★★★ 対象:睡眠の謎がどこまで解明されたか知りたい人
【和田岳 20250423】
●「睡眠の起源」金谷啓之著、講談社現代新書
眠りの起源と仕組みを研究している著者が、自身の研究歴とともに睡眠について語る。
クロアゲハは夜どこで寝てるのか?と疑問に思った小学生時代。あわせて寝てる時の脳波が解説される第1章。高校生時代、徹夜で試験勉強して失敗。あわせて断眠実験、寝だめと睡眠物質が紹介される第2章。
第3章では、プラナリアを飼育した話からの、体内時計と時計遺伝子の説明。
第4章-第5章、大学に入学すると、1回生の時から研究室に出入りしてヒドラの睡眠の研究を開始。韓国との共同研究を経て、ヒドラも眠るという論文を発表。第6章は”睡眠の起源は何か”と題しているのだけど、眠らない動物はいるか?などが書かれているものの、起源についての結論はなし。
タイトルに惹かれて読み始めたら、ヒドラが眠ることが判ったものの、睡眠の起源はさっぱり判らず、モヤモヤして終わる。睡眠の定義、断眠実験、麻酔がどうして効くかが判ってない等々、興味深い内容も多いので、ストーリーは気にしない方がいいのかもしれない。
お薦め度:★★ 対象:睡眠についての色んな話題を知りたい人
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