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本の紹介「そのシカ、どこから来たと思います?」

「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房、2026年6月、ISBN978-4-86811-061-3、2700円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【和田岳 20260828】【公開用】
●「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房

 DNAの塩基配列を調べることで生物の暮らしや歴史を明らかにする分子生態学。その研究者である著者による、ニホンジカの移動と人との関わり、さらには現在のさまざまなシカの問題を紹介した一冊。
 自己紹介を兼ねた分子生態学の紹介、シカの研究を始めたきっかけが語られた後、奈良公園のシカの遺伝的特殊性(奈良公園は1000年以上にわたる陸の島だった!)、山がちな屋久島で短足になったヤクシカ、ヤクシカが混じる富山のシカ、ヨーロッパ各地に持ち込まれてアカシカと交雑しているニホンジカ、ケラマジカやツシマジカが遺伝的にはキュウシュウジカと変わらないこと。前半は、シカのDNAを調べて判る話題の連発。
 後半は、どうしてシカが増えているのか、シカが増えると何が問題か、その対策の難しさと、奈良公園のシカと人の関係。といった話題が並ぶ。著者が、奈良公園のシカに妙に愛着があるのが不思議だけど、それ以外はよくまとまっていて勉強になります。

 お薦め度:★★★★  対象:DNAを調べて生き物の暮らしを明らかにする、という話に興味がある人、あるいはシカ好き
【里井敬 20260827】
●「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房

 日本にいるシカは『ニホンジカ』1種のみだか、亜種は6亜種いる。世界を入れると14亜種だ。どこにでもいるシカだが、DNAを調べてみたら富山のシカが屋久島出身であったり、フランスの『ライブイエ』の広大な塀に囲まれた森の中のシカは奈良の血統を持っている。シカは自分で移動して生活域を拡大する以外に人によって運ばれて定着することもあるようだ。シカは1年に1頭しか子を産まないが、長い年月繁殖できるので、ゆっくり増えていく。また。育った環境によって姿形を変え、性質も変化させる柔軟性を持っている。奈良のシカは1400年の短時間で特殊な性質をもつようになった。今、シカが日本中で増えている。シカと植物、クマとの関係、農業との問題。生き物の関係は複雑に絡み合っている。

 お薦め度:★★★★  対象:奈良公園の鹿は野生?と疑問を持っていた人
【西本由佳 20260823】
●「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房

 著者は野生生物の遺伝情報を調べる専門家。遺伝情報を調べることでシカの何がわかるかを解説してくれる。日本各地のニホンジカの地域による違い、遺伝的多様性の低いわずかな個体群からでも数を増やしていくしぶとさ。遺伝情報から、シカが人によってあちこちへ連れていかれ、そこで数を増やしてきたこともわかる。漢方薬の材料として、船で扱いやすい食料として、外交上の贈り物として、シカは移動させられ、そこでしぶとく生き残ってきた。最後は増えるシカの問題。シカを時には絶滅近くまで追い込むほど利用してきた時代から、利用することがなくなり保護してきた時代があり、現在またシカと人の関係は変わりつつある。数が増え、人の領域へ入り込むことによる農林業被害や交通事故といったあつれき。保護は個体を守ること、保全は個体ではなく、その生きものの住む場所や他の生きものとの関係も含めて守って引き継いでいくことだという。

 お薦め度:★★★  対象:人里にシカがいることが気になったら
【萩野哲 20260814】
●「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房

 DNAを調べると、形態だけではわからない生き物の細部が見えてくる。生物のうちでも、シカはヒトも含む他の生物との関わりが大きく、これらに強い影響を与えている。日本各地で見られるディアラインや好む植物の矮小化、それらの植物に依存する動物の減少、ヒルの増加、オオセンチコガネの色彩進化等々。DNAによって移動の歴史もわかる。シカは100kmも移動する一方、奈良公園のシカは1000年以上他の場所のシカと交わることなく独自に世代を重ねてきた。それは、平城京遷都と保護の歴史が深く関連していることがわかった。しかし、この街の中の孤島とも言える奈良のシカにも、変化の波が忍び寄っている。

 お薦め度:★★★  対象:シカの特異性、影響力について知りたい人
【森住奈穂 20260828】
●「そのシカ、どこから来たと思います?」兼子伸吾著、緑書房

 シカがこれ程適応能力の高い動物とは知らなかった。著者は野生生物の遺伝情報を調べる専門家。ニホンジカは「少ない数からでも増えて、集団を維持できる」特徴があるそうで、近親交配が問題にならないらしい。人為的な移動の後にその土地に定着、わずか数十世代で体の色や形を変化させ、昔からそこに居たかのようにふるまえるらしい。忍者みたい。洞爺湖中島では3頭から20年で300頭に!ヨーロッパではアカシカとの交雑が増えている!今年春、大阪市内に出没したシカは奈良公園から新天地を求めて来たようだけど…。シカの勢力拡大能力は無双かも知れない。

 お薦め度:★★★  対象:シカが増えているニュースを耳にしたことのあるひと
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