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本の紹介「自然観察会の進め方」

「自然観察会の進め方」浜口哲一著、エッチエスケー、2006年12月、ISBN4-902424-03-7、900円+税


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【加納康嗣 20070119】
●「自然観察会の進め方」浜口哲一著、エッチエスケー

 題名を見て初心者向きの解り切ったことが書かれていると早合点して直ぐには手を付けなかった。しかし、ブックレット型の小冊子で読みやすいく、自然観察会を指導しているものには、己のやり方を反省し、新しい視点や方法を再認識する絶好の書物であった。
 長い経験・感性と知識に彩られた言葉が語られる。「なぜ自然観察なのか?」では、「自然観察会の原点は、参加者に自然と接することの楽しみが伝わり、毎日の生活の中で自然に目を向ける人が増えることだと思う。牧歌的な考えだと怒られるかも知れないが、スポーツを楽しむ人があれだけいるから、政治家の目もスポーツに向けられる。大きな世論を作るためにも、まずは自然好きを一人でも増やすことが大切なのではないだろうか。」「子ども時代を振り返ってもう一つ思うことは、自然が人をまるごと育ててくれる力をもっているということである。」「感性も五感も好奇心も刺激され、なおかつそうやって何時間も遊んでいると、いつの間にかからだが鍛えられた。このように楽しく遊んでいるうちに、人をまるごと育ててくれる、そうした存在として自然以上のものがあるだろうか。」
 「自然観察の道はどこへ通じているか?」では、自然科学的研究や環境問題への関心・取り組み、芸術や多様なものの見方や発想につながっていくことを明確に解析している。
 「自然解説の方法」では、参加者の立場にたったきめ細やかな手法を学ぶことが出る。五感を楽しめるものとして特に聴覚を楽しむことや、植物の匂いを観察する四段階法(1,手のひらで葉など植物を包む、2,親指の爪で傷を付けて、3,小さくちぎって指先でもむ、4,両手の指先でもみ両鼻穴に近づける)など、クサギの匂いでは、「臭いでしょう」で片づけてしまうことが多いが、香しいと感じる人の存在を配慮した指導法など、認識が段階的に深化することを配慮した指導法が語られる。「リーダーとしての自分を磨くために」では、”トコロジスト”という概念が示される。
 「自分のホームグランドを持つということは『その場所の専門家』になるということだ。そうした専門家は、月に何回もその場所に足を運び、その自然についてすみからすみまで知り尽くしている。その環境にどんな変化があり、それがどんな原因によるものかについて自分なりの考えをもっている。管理者とも好く知り合っており、近所の人や訪れる人に顔なじみが多い。必要があれば、その場所の案内をかってでることもいとわない。私の友人の田端裕氏はそうした『ある場所の専門家』に『トコロジスト』と命名した。これからの自然保護には、動植物の専門家、生態学の専門家などとおなじ重みでその場所の専門家が活躍する必要があるのではないか、それが私と田端氏の共通の考えである。」
 今続けているギフチョウの保護活動にはトコロジストであることが最低条件である。土地の歴史文化、生産活動にも理解が必要である。日浦勇さんに『土着したい』という雑文がある。その根底にある思いはトコロジストになることであった。目から鱗が落ちる思いであった。

 お薦め度:★★★★  対象:自然観察の指導を心がけている人

【西村寿雄 20070221】
●「自然観察会の進め方」浜口哲一著、エッチエスケー

 ある自然観察会に参加した人が,こんどは自分が自然観察会を開くときの心得や理念についてていねいに書かれている。その意味では,これから「自然観察会を始めたい」と思う人には参考になるかも。今,観察会を催している人の多くは,自分の趣味がこうじて長年の経験に裏付けられたノウハウを持っている。この本に書かれているように,すんなりと企画運営ができるとは思わない。とりあえずは,近くの「自然観察会」に積極的に参画することから始めるといい。

 お薦め度:★★★  対象:「自然観察」に興味のある団塊世代のみなさん

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