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本の紹介「死の病原体プリオン」

「死の病原体プリオン」リチャード・ローズ著、草思社、1998年7月、ISBN978-4-7942-0832-3、1900円+税


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【六車恭子 20110225】
●「死の病原体プリオン」リチャード・ローズ著、草思社

 ニューギニア東部高地フォアの人食い族で1950年に見つかった「クールー病」、その以前から知られていたクロイツフェルト=ヤコブ病、18世紀頃から羊の病気として知られていたスクレイピー。それらは脳がスポンジ化して死に至る恐るべき奇病であった。この前代未聞の病原体を追求する一進一退の科学史に刻まれた格闘をつぶさにドキュメントしたのが本書である。奇しくもガイデュシェック、プルシナーの二人のノーベル賞受賞者を生んだこのレースはまだ終わりをつげていない。スポンジ状脳症にいたる病原体の正体は人的に動物性飼料を与えつづけた結果であり、鉱物性のちりのようなわれわれのまわりにあるものが感染性スポンジ状脳症のアミロイド形成の核になる!のだ。「それは神の乳鉢の中で粉々にされたわれわれの『原罪』の化石化した破片とでもいえよう。」いみじくも著者はつぶやく。様々の人知を結集させても現在の生物学では解けない謎の顔をして死の病原体プリオンは「ウイルスに身をやつした神」となってわれわれを罰しにやって来たのだろうか。太平をむさぼる現在が宛のないものであるという恐怖を実感した次第です。

 お薦め度:★★★★  対象:肉食主義、菜食主義にかかわりなくだれでも

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