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本の紹介「世界史を大きく動かした植物」

「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所、2018年6月、ISBN978-4-569-84085-7、1400円+税

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【西村寿雄 20200417】【公開用】
●「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所

 カバー表紙に「私たちは、植物の手の平のうえで踊らされているのかもしれない―」と書かれている。私たち人間が小麦や稲、トウモロコシの価値を見出し、ジャガイモ、トマト、綿など数々の植物の価値を高めながら貿易を繰り返してきた人間の歴史がコンパクトにまとめられている。新大陸が発見されて、ヨーロッパ各地の欲望と新大陸植物の拡散の歴史でもある。チューリップバブルなど人間の浅はかさも垣間見える。最後のサクラの話にはほっとさせられる。

 お薦め度:★★★  対象:植物の歴史に興味ある人
【冨永則子 20200312】
●「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所

 小麦、稲、胡椒、唐辛子、ジャガ芋、トマト、綿、茶、砂糖黍、大豆、玉葱、チューリップ、トウモロコシ、桜… どの植物も今の私たちの暮らしの中では欠かせない当たり前のような存在だが、これらが日常に定着するまでには地球規模の変遷があった。原種となる植物から栽培品種へと改良が重ねられ生産されていく。教科書で習う歴史は年代と場所、人物名など点として記憶するが、本来の時間は流れ広がり、ときには途絶え復活し続いていく。私たちの身近な植物を通して歴史を点から線へ、面へ、そして層として実感する。社会文化史的に植物を知ることができる。トウモロコシには原種に当たる植物が無いらしい。ネイティブアメリカンの昔話に「とうもろこしおばあさん」という起源話がある。それによるとトウモロコシの粒は、おばあさんの太腿の垢からできているそうだ。やっぱり、あのおばあさんは宇宙人だったのかな?

 お薦め度:★★★  対象:植物の起源に興味のある人に
【萩野哲 20200407】
●「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所

 本書には人間の「食」の面で重要な11種、「衣」の面で重要なワタ、更には、眼を楽しませる花の代表としてチューリップとサクラ、計14 種の植物の話題が、各々平均14 ページという比較的少ないスペースに凝縮されている。現在の食物事情を支えている主要な植物の各々の内容については知っていることもあったが、実際にどのように大きく世界の歴史を動かしたか、という観点から見るのは興味深い。このような本を読んで連想するのは、中尾佐助「栽培植物の起源」だ。恐らく同種の植物については同様の事が紹介されていたのではないかと推察するが、何しろ読んでから 50年も経過しているので詳細を思い出すことができない。

 お薦め度:★★★  対象:本書に紹介されている植物を食べたり触れたりする際、それらの歴史に想いを馳せてみよう!
【森住奈穂 20200425】
●「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所

 植物が主役の歴史物語。コショウやチャ、トマトや唐辛子、チューリップなどさまざまな植物が取り上げられるが、コムギとイネの章が特に興味深く読めた。イネ科植物がケイ素を体内に蓄えるようになったのは600万年ほど前のこと。葉を食べられなくなった草食動物の多くは絶滅したらしい。人類は種子を効率よく食べるために栽培を試みる。そして農耕が生まれ、富が生まれ、国が生まれ、歴史が生まれた。イネはコムギに比べて格段に収量が多く、しかも栄養価に優れているそうで、密集と点在という現代まで続く日本とヨーロッパの田園風景の違いに納得。農耕も採集も、生きていくためのものなのだから当然民族性の形成に関わる。いろんな意味で植物は歴史を動かしているんだなぁ。サクラの「さ」がさつき、さおとめの「さ」だったなんて知らなかった〜。トウモロコシは宇宙から来た植物、だといいなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:新たな視点で植物の来し方を知りたいひと
【和田岳 20200626】
●「世界史を大きく動かした植物」稲垣栄洋著、PHP研究所

 はじめににこうある。「人類の歴史の影には、常に植物の存在があったのだ」。格好いい! そして取り上げられる植物が、コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラ。
 コムギやイネが人類の歴史を大きく変えたのは異論はなさそう。コショウ、ジャガイモ、ワタ、チャは、航路開拓、飢饉と移民、産業革命、戦争といった形で大きく歴史に関与してそう。でも、他は単に食生活とかを変えただけなんじゃないか? ダイズとサクラが動かしたのは、せいぜい日本史では? 大上段なはじめの言葉を、忘れてるんじゃないかという章も散見される。でも、楽しく読めるし、後ろに参考文献にあるので、詳しくはそちらをご覧ください。

 お薦め度:★★  対象:世界の多くの人に影響を与えた植物について、ざっと眺めたい人
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