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本の紹介「世界は進化に満ちている」

「世界は進化に満ちている」深野祐也著、岩波科学ライブラリー、2025年6月、ISBN978-4-00-029734-9、1500円+税


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【和田岳 20251024】【公開用】
●「世界は進化に満ちている」深野祐也著、岩波科学ライブラリー

 かつて進化は長い時間をかけて進行する現象で、人がそのプロセスを見ることはできないとされていた。しかし近年、進化が思いのほか速く進むことが明らかになり、身近にさまざまな進化が見つかってきている。
 進化の仕組み、急激な進化が起きる条件を説明した後、薬剤耐性、工業暗化に始まり、都市環境への進化、外来生物やその周囲で起きる進化、保全の現場で起きる進化と多数の実例が並ぶ。狩猟によって角や牙が短くなり、鳥や鳴く虫は都市の騒音に適応し、外来生物オオヒキガエルが在来のヘビの頭を小さくする。急激な進化のほぼすべてに人間活動が関わっている。進化を方向付ける意味でも、ヒトのプレゼンスは大きい。
 害虫や外来生物を駆除しても、希少生物を保全しても、なにかしらの進化を引き起こしてしまう。避けようはなさそうだけど、それを意識することは重要だろう。

 お薦め度:★★★★  対象:進化研究の最前線を知りたい人
【萩野哲 20250920】
●「世界は進化に満ちている」深野祐也著、岩波科学ライブラリー

 進化は時としてあっという間に起こり、いかに人の影響による進化が起こっているかを紹介するのが本書の目的。オオシモフリエダシャクの工業暗化や、オオツノヒツジのトロフィーハンティングによる角の小型化はその代表例。ヒートアイランド現象に適応したカタバミの赤葉、光に誘引されにくいイガ、低周波の騒音に適応したより高音で鳴く鳥類(もし遺伝的でなければ進化ではないことに注意)、捕食者や他種との競争の減少で弱毒化したクローバー等、都会は進化を観察しやすい場所だ。外来植物は、まだ捕食者がいない新しい侵入先で一時的に弱毒化するが、それに付け込んで追いかけてきた捕食者が新しい獲物を得ることもあるのは驚き(オオブタクサとブタクサハムシの関係)。希少動植物を保全する現場でも、次にどのような進化が起こるか予測することが成否を握っている。そう、進化は予測しなければならない段階に来ている。

 お薦め度:★★★  対象:これから生物はどう進化するか考えたい人
【森住奈穂 20251024】
●「世界は進化に満ちている」深野祐也著、岩波科学ライブラリー

 「進化」というと長大なスケールで起こるものだと思いがち。だけど本書を読むと、こんなに身近で!目の前で!と、驚きの連続である。さまざまな事例が紹介されており、どれも興味深い。著者自身の研究、ブタクサ・オオブタクサ・ブタクサハムシの関係は、外来種のダイナミックな進化について教えてくれるし、外来種管理や保全の現場で起こる進化については、待ったなしの状況であるのに研究は始まったばかり、とのことでもどかしい。進化がこんなに身近なものだったとは!目からウロコが落ちた一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:進化といえばサルから人間だと思っているひと
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