友の会読書サークルBooks

本の紹介「生命にぎわう青い星」

「生命にぎわう青い星 生物の多様性と私たちのくらし」樋口広芳著、化学同人、2010年1月、ISBN978-4-7598-1330-2、1600円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【和田岳 20101217】【公開用】
●「生命にぎわう青い星」樋口広芳著、化学同人

 東京大学教授で、日本鳥学会会長もつとめた。とくれば、日本の鳥類学の中心的な感じ。そんな著者が、鳥を題材に生物多様性について解説した一冊。
 「いろいろな生き物、さまざまな自然」「なぜこんなにいろいろな生物がいるのか」「どのようにして多様になってきたのか」「生物多様性の価値」「失われゆく自然や生きもの」「温暖化が生きもののくらしに及ぼす影響」「拡大する野生との軋轢」「未来にむけて」。
 数式はいっさいなく、図表もとても少なめ。個々の章もとてもわかりやすくまとめられている。一言で言えば王道。教科書通りの答えがある感じ。問題があるとしたら、実際はこんなに必ずしも割り切れるわけではないということ。この一冊だけで、すべてがわかったように思わない方がいいだろう。
 ちなみに地球温暖化が叫ばれてはいるけど、その鳥への影響をわかりやすくまとめた本として、この本は価値が高そう。なにか調べる時には参照させていただこう。

 お薦め度:★★  対象:鳥を中心にした生物多様性の教科書を求めていれば

【六車恭子 20101217】
●「生命にぎわう青い星」樋口広芳著、化学同人

 私たちが住む地球を宇宙から眺める視点で本書は読み解こうという野望で始められたようだ。ですから表紙のロングの美しい青い星が永遠であることへの祈りの書でもあろう。生物多様性の実態を種の多様性、種内の遺伝的多様性、生態系の多様性が織りなす関係の総体としている。それぞれの種はどこに住むかという「住」生活と、何をどうやって食べるかという「食」生活に特殊かした専門家とみる。それぞれの種が自然界で独自の「生態的地位」を占めたその場所を追われつつあるのだ。かけがえのないこの宇宙船地球号の航空機のリベットはすでに多数失われた。彼らから生態系サービスを引き出す我々こそそのかけがえのなさを噛みしめ、未来への第一歩を模索しなかれば、と促す書になっている。

 お薦め度:★★★  対象:自然の仕組みに興味を抱きはじめた人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]