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本の紹介「生物を分けると世界が分かる」

「生物を分けると世界が分かる 分類すると見えてくる、生物進化と地球の変遷」岡西政典著、講談社ブルーバックス、2022年7月、ISBN978-4-06-528818-4、1000円+税


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【和田岳 20221221】【公開用】
●「生物を分けると世界が分かる」岡西政典著、講談社ブルーバックス

 テヅルモヅルの分類研究者が、自身の経験を交えつつ、分類学、あるいは分類学者がしてることについて紹介した一冊。
 分類学については、その歴史をアリストテレスからリンネまで軽く紹介して、リンネの二名法、そしてイマドキの分子系統解析を詳しめに解説。分類学者のお仕事としては、新種の記載、命名規約、異名問題や同名といった分類学的混乱の解決など、けっこう詳しめに紹介。
 分類学の役割は、生物を認識して分けること。それは、生物が多様であるという理解につながり、あるいは我々が認識できている生物種が全体のごく一部だけと認識すること。それには異論はないけど。分類学で世界が変わったりするかなぁ、とか。生物を分けると世界が分かるのかなぁ、とか。大層な物言いには疑問と引っかかりを感じる。

 お薦め度:★★  対象:分類学者が何をするのか、さっぱり知らない人
【萩野哲 20221117】
●「生物を分けると世界が分かる」岡西政典著、講談社ブルーバックス

 分類学の教科書ないし普及書ではどうしても分類学の歴史(特にリンネ)に触れないわけにはいかない?ので、初めての読者にはともかく、何冊も類書を読んだ者にはそのような箇所は少しイラッとしてしまうのはハンディキャップとなるだろう。その分、タイトル(著者が言いたかったこと)の「生物を分けると世界が分かる・・・」の部分が希釈されて弱い気がする。“手前味噌”なんて言わずに、もっと自分が分類学上遭遇した面白い逸話を満載してくれたら、もっと面白い本になっていただろうに。

 お薦め度:★★  対象:初めて分類学の教科書ないし普及書を読む人
【西村寿雄 20221219】
●「生物を分けると世界が分かる」岡西政典著、講談社ブルーバックス

 著者は棘皮動物の〈テズルモズル〉の研究者であるが、研究の一分野である生物分類学を熱く語った本である。分類学の歴史からひも解いている。一般的には従来の形質をもとにした形態学的分類で行われているが、当然細かく見ていくと合わない場面にもでくわす。近年になって出てきたのは系統樹をもとにした遺伝的分類、さらにはDNA解析による分類によって系統学は大きな進歩をとげた。それらの経緯を細かく書いているが、一般人には形態学的分類で行くしかない。一般読者にはあまり関係ない話も多い。世界にはまだまだ知られていない生物がいるが、分類学で「世界が分かる」と言うのは生物学に限った話。

 お薦め度:★★★  対象:分類学を志望する学生
【西本由佳 20221218】
●「生物を分けると世界が分かる」岡西政典著、講談社ブルーバックス

 テヅルモヅルを研究する分類学者が、分類学とは何か、どんな役割があるか、どんな方法で世界を分けるか、について教えてくれる本。自然を楽しむのに名前が分かるのは必須ではないと、自然観察の入門ではよく言われる。だけど、もう一歩入ってみると、名前は知りたくなるし、名前で自然を区別することで分かること、見えてくるもの、守れるものはとても大きい。分類学の方法というのは、書いてある通り、手順は多いし、複雑で難しいこともあるけど、それだけのことを理解する必要性がどれだけ大きいか理解できた。

 お薦め度:★★★  対象:名前を知るということを少し勉強したくなったら
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