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本の紹介「里海の生活誌」

「里海の生活誌 文化資源としての藻と松」印南敏秀著、みずのわ出版、2010年3月、ISBN978-4-944173-77-8、2800円+税


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【中条武司 20150417】【公開用】
●「里海の生活誌」印南敏秀著、みずのわ出版

 1950年代までの瀬戸内海と三河湾を対象に、タイトルにあるように藻(アマモやホンダワラ)と松を中心に据え、生活の場として「里海」を利用する人々がどのような生活をしていたかを民俗学的に迫っている。ほんの数十年前まで、藻と松が瀬戸内海で重要であったかがよくわかる。アマモもホンダワラも畑の肥料には必要で(塩害発生しないの?)、採藻にお金が発生したり、藻を採るためにわざわざ船を出したり、夏の大潮時には家族総出で採りに行ったりといった風景が書かれている。また、瀬戸内海の島ごとの違い、時代による変遷など興味深い記述がたくさん。それぞれの島を訪れ、残っている(残っていない)文化に触れてみたいと感じさせる。とりあえずまだ竹原に残っている、松葉を燃料に、アマモを蒸して入浴する「岩風呂」は、なくなるまでに行かねば。

 お薦め度:★★★  対象:海に関わった生活に興味のある人

【和田岳 20150417】
●「里海の生活誌」印南敏秀著、みずのわ出版

 数十年前の三河湾と瀬戸内海という2つの内海を舞台にした文化人類学的フィールド調査レポート。江戸時代の終わりから昭和30年頃までが舞台。
 当時、瀬戸内海や三河湾の島や海岸部では、人口が増加し、耕作地を増やすものの、燃料や肥料が不足していた。そこで、アマモやホンダワラを採取しては肥料にし、松を植えては切って燃料にしていた。この二つはとても重要な資源で、それを巡ってもめたり、採取期間を制限したり、どこで取るかをクジ引きで決めたりしていたらしい。
 そうした生活は、化学肥料や石油燃料が普及し、終わりを迎えた。海に下水が流れ込み、海岸の護岸が進むと、藻場自体も消えていったらしい。
 当時の生活をまだ知る人からの聞き取りに基づく話がさまざまに語られる。島ごとに、藻や松、及びそれに関連した道具などの呼び方が異なるのは、とても面白い。けど、ややこしくて覚えられない。
 残念ながら本と言うよりは、研究資料といった側面が強い。同じ事が何度も出てきて整理が不十分。後半は眠くなる。

 お薦め度:★★  対象:かつての瀬戸内海や三河湾の島や海岸での生活に興味がある人
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