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本の紹介「サンゴと生きる」

「サンゴと生きる」中村征夫著、大空出版、2020年6月、ISBN978-4-903175-93-5、1200+税


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【西村寿雄 20210222】【公開用】
●「サンゴと生きる」中村征夫著、大空出版

 沖縄海岸のサンゴ礁に生きるオオアカホシサンゴガニが語り主。サンゴには枝状のものから、平板状、円形のサンゴもある。サンゴはたくさんの触手を広げていて、かっちゅう藻という植物プランクトンを主に食べて生きている。かっちゅう藻は太陽の光を受けて光合成をする。となると、かっちゅう藻は光を求めて生きているのにサンゴが密集してくると太陽光が当たりにくくなる。かっちゅう藻が弱るとサンゴも栄養がもらえなくなり死滅に追いやられる。ここでし烈なサンゴ間の戦いが始まる。特別に敵を攻撃するしょく手が伸びてくる。胃の中の消化組織(隔膜手)を外に伸ばして相手の組織や細胞を破壊することもする。その特別なしょく手の写真や、細い隔膜手の写真がとても鮮明に映し出されている。サンゴ産卵の写真は見事。各ページの語りは簡潔で小学生でも読める。

 お薦め度:★★★  対象:海好き小学生から大人まで
【冨永則子 20210202】
●「サンゴと生きる」中村征夫著、大空出版

 浅い海の棲み石の骨格を持つイシサンゴは、世界で800種類が確認されていて、その半数の400種類ほどが沖縄の海にいる。本書では、サンゴの狭い狭い隙間を我が家にしている甲羅の幅が2センチほどの小さなオオアカホシサンゴガニを主人公にして、サンゴの生態やサンゴが暮らす海の環境のことを私たちに教えてくれる。サンゴは石のようで動いているように見えないし、生き物だと実感しにくいが、触手を広げて動物プランクトンを捕らえ、触手を長く伸ばして敵を攻撃し、消化組織を外に伸ばして相手の細胞や組織を破壊する攻撃的な生物だ。オニヒトデに襲われたり、海水温の上昇でサンゴが白化して死んでしまう。サンゴ礁は海全体の0.2%しかないが、全海洋のおよそ4分の1の生き物たちがサンゴ礁に棲んでいる。サンゴを守ることは海の生き物たちを守ることだ。今、人にできることは何かを考えさせられる。

 お薦め度:★★★  対象:沖縄の真っ青な海に憧れる人に
【森住奈穂 20210224】
●「サンゴと生きる」中村征夫著、大空出版

 サンゴは水温18〜30度の暖かい浅い海に住んでいる。冬の真っ只中にいる私にはとっても羨ましい環境だ。だけどそこは大自然のなか。食うか食われるかの厳しい生存競争が繰り広げられている。さらに地球温暖化による海水温の上昇もあって、サンゴを取り巻く環境は厳しさを増している。決して美しいだけの世界ではないのだ。本書の語り部は沖縄のサンゴ礁に暮らす小さなカニ。サンゴのすきまでサンゴが出す粘液を食べて一生を過ごす。サンゴの暮らしぶりとその周辺に暮らす生きものたちを全編カラーで紹介する写真絵本。サンゴがたくさんの生きものたちの命をはぐくんでいることを知ることができる。

 お薦め度:★★★  対象:サンゴ礁への引っ越しを夢見ているひと
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