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本の紹介「ピカソを見わけるハト」

「ピカソを見わけるハト ヒトの認知、動物の認知」渡辺茂著、NHKブックス、ISBN4-14-001747-3、825円+税


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【西川裕子 20030423】【公開用】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 「動物と話がしたいなあ」そう思ったことはありませんか?
 会話はちょっと無理そうですが、動物とコミュニケーションをとる方法は古くから研究されています。そして、動物達が見たり・聞いたり・考えたりすることは、人間とは違っているということも分かって来ました。
 この本はそういった研究を紹介した本です。実験とそのレポートが主な内容となるため少し難しいのですが、動物達が観ている世界を知り、人間特有な認知(世界の捉え方)がどんなものなのか考えることのできる本です。
 
 お薦め度:★★★  対象:動物がどんな世界を観ているのか知りたい人向き

【河上康子 20030423】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 ヒトが‘意識’をさずかり自我を認識した瞬間から、ヒト以外の生き物に心があるのか否か、おそらく最大の関心事のひとつであり続けたと思う。心理学者である著者が、比較認知科学の立場から、ヒトがこの難問にいどみ続けた過程を、ハトやオウム、アシカ、イルカなどを用いた研究例をあげて解説している。膨大な情報圧縮能力を持ち、柔軟な判断が可能なヒトの認知と、細かく精密な記憶と感覚を駆使して、それぞれの生き方に適していると思われる、動物の認知との違いと、共通点とが、よくわかる。ヒトと異なるアプローチではあっても、動物の持つ独自の驚異的な感覚,認知能力にあらためて感動する。
 
 お薦め度:★★★  対象:動物のこころや、認知方法に興味のあるひと

【寺島久雄 20030412】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 言語を持たない動物を訓練することによって、その能力を発見する試みで「ハト」がピカソの絵を見分ける認知能力を実験で見ることに始まり。アシカ、イルカ、とそれぞれの視覚認知能力、区別、記憶、思考、等を何処迄持っているか不明な処が多いが、特有の能力があることが確認された。
 又それらの知性、思考、意識の能力に限界をも見せてくれている。
 動物が持っている能力の一部をヒトの物差しで計っているのにすぎない感じがしないでもないと思った。
 
 お薦め度:★★  対象:動物の好きな人に

【早川ひろみ 20030424】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 「ききみみずきん」は、かぶれば鳥たちの話しが聞ける帽子の話しでしたが、この本は鳥たちがどんな風にものを見ているかがわかるものです。
 ピカソとモネの絵を見せ、片方の絵をつつけば、餌を貰えるという訓練を受けると、ハトは20日程度でこの区別ができるようになります。画家の作風までも理解していき、これまでの訓練で見せたことのない絵にも反応するようになります。
 また、鳥の記憶に関しては、ホシガラスは秋に七千もの餌の隠し場所を作り、春に見つけるという素晴らしい記憶力を持ちます。
 様々な実験を通じ、動物の知性に迫ります。他の動物の世界の見方を知ることは人間理解につながるのではないでしょうか?
 
 お薦め度:★★★  対象:人間や動物の知性を知りたい人

【六車恭子 20030420】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 「他人の世界の見方を理解することが自分自身の世界を豊かにするように、他の動物の世界の見方を知ることはより深い人間の理解につながるはずだ。」がこの学問の出発点にある。
 表題の「ピカソを見わけるハト」は実際は「ピカソやモネの作風の区別を覚えた」と考えるほうがよさそうだ。ダチョウは卵の殻にある小さな穴のわずかな配列の違いで自分の卵を見分ける能力を持ち、鳥たちは孵化後刻印づけされた記憶が長い間使われることなく脳の中で眠り続け将来のパートナーとの出会いを待っていることや、隠した餌の在り処を覚える特別な記憶力といい、動物の認知データは驚くばかり。
 しかし人間の言語がコミュニケーションの手段とて使われるばかりでなく、ことばの演算(歴史や文学か?)による問題解決をはかる人間の独自な世界がある。ヒトの認知と動物の認知を進化の過程から関連づけるにはまだまだデータを要するようだ。
 
 お薦め度:★★  対象:実験結果を想像豊かに読み解く能力のある人

【和田岳 20030424】
●「ピカソを見わけるハト」渡辺茂著、NHKブックス

 タイトルのハトだけでなく、鳥類全般やアシカ・イルカなどを含め、鳥類・哺乳類全般の認知について、わかりやすく研究の先端が紹介される。
 ピカソとモネの絵を見分けるかとはじめとしたハトの視覚認知能力、鳥や哺乳類の記憶力、ハトの論理的な判断力など、著者自身の実験をまじえた内容はとても興味深い。アイデア次第で、比較的簡単に最先端の研究ができそうと思わせるので、一つペットで実験してみてはいかがでしょう?
 
 お薦め度:★★★  対象:動物が何を考えているのか知りたい人に

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