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本の紹介「ペンギンのしらべかた」

「ペンギンのしらべかた」上田一生著、岩波科学ライブラリー、ISBN978-4-00-029582-6、2011年7月、1200円+税


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【井岡泰一 20111028】【公開用】
●「ペンギンのしらべかた」上田一生著、岩波科学ライブラリー

 ペンギン会議研究員・高校の教員の上ださんがこの本の目的は、「(ペンギン)研究者たちの背中を追いかけながら、ここ二十数年間の研究で明らかになった、ペンギンに関する新しい知見を紹介することにある。しかし、専門的な学問領域にはあまりこだわらないことにする」と書いている。
 ペンギンは、南半球にしかいない。南極に住んでいるのは、そのうち半分くらいで、あとは温帯や熱帯に住んでいるという。
 水中を飛ぶ!などと、楽しい表現のペンギンの多い中、この本は少し趣きが変わっている。「飛べないから逃げられない 怖くないから捕まえやすい 弱くないから研究しやすい」という、ペンギンを、それを研究する立場からの苦労をまじえて、たんたんと説明されている。
 捕まえかた、泳ぎかた、食べかた、旅のしかた、見分けかた、暮らしかた、見守りかたと、具体的に、研究者のペンギンに対する愛情あふれる見方で、研究の歴史を織り込みながら書きすすめている。
 見た目は、「ペンギンのしらべかた」と、そのまんまの本ですが、なかみは研究の歴史物語のようになっています。もうすこし、挿絵や写真、説明が多いともっと読みやすくなるでしょうが、著者の高校の仕事以外は、ペンギンに関すること、というくらい、やさしさが感じられます。

 お薦め度:★★  対象:

【萩野哲 20111027】
●「ペンギンのしらべかた」上田一生著、岩波科学ライブラリー

 ペンギンのように誰でも知っている鳥類は他にないとも言えるが、同時に、それほど知られているにしては研究が進んでいないことも、この本を読むとよくわかる。陸上にいる時は捕まえるのこそ簡単そうだが、個体識別は大変困難。ましてや海中を遊泳している時は、最近のデータロガ発達以前は観察不可能に近かった。ということで、驚き以上に疑問が残る読了感であった。ようやく研究者も増えてきたそうだし、今後の研究の進展と謎の解明が期待されるペンギンである。

 お薦め度:★★★  対象:世の中に多いペンギン好き

【和田岳 20111028】
●「ペンギンのしらべかた」上田一生著、岩波科学ライブラリー

 タイトル通り、ペンギンがどのように調べられているかを軸にペンギンが紹介されていく。著者は、学校の先生でプロの研究者ではないが、世界各地の研究者の調査に同行して、あるいは国際会議に出席して、ペンギン調査の実情をよく知っている。その経験が結実した一冊。
 捕まえかた、泳ぎかた、食べかた、旅のしかた、見分けかた、暮らしかた、見守りかたという章が並び、それぞれのテーマのしらべかたが紹介されていく。
 ペンギンを知るために色々苦労する研究者の姿は、なんとなく楽しそう。できれば一度、ペンギン調査について行ってみたい。

 お薦め度:★★★  対象:ペンギン好きでなくても鳥好き動物好きなら

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