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本の紹介「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」

「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫、2013年6月、ISBN978-4-7942-1978-7、700円+税


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【和田岳 20131213】【公開用】
●「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」 ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫

 『銃・病原菌・鉄』で有名なジャレド・ダイアモンド(それでいて実は鳥の生態学研究者であり、医学部教授)がヒトの性行動を進化生物学的に考察した本。
 我々にとっては当たり前でも、哺乳類や鳥類など他の動物とくらべると、ヒトの性行動は変わっている。これがすべての始まり。我々にとって当たり前、でも他の動物ではあまり見られない、どうしてヒトはそのような性質を身に付けたのか。というパターンで、父親が子育てに関わること、母親のみが授乳すること、基本的に一夫一妻で、女はいつ排卵するかのシグナルを出さず、生殖に関わりなく性行動を行うこと、閉経と言う現象があること。次々といろいろなテーマが取り上げられる。
 以前の邦題は、『セックスはなぜ楽しいか』だったそう。今回、より手に取りやすいタイトルに変えたそうだが、それでも電車の中では少し読みにくかった。

 お薦め度:★★★  対象:他の哺乳類を見渡すとヒトの性行動には例外的な部分が多い、と言われて、少しでも驚いた人

【加納康嗣 20131212】
●「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」 ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫

 自らのセクシュアリティをかえりみながら読み進めていく自虐的スリル感がたまらない。ヒトは、♀の排卵が隠されていること、受精のためでなくもっぱら楽しむために内密に性交すること、4-50歳台で♀は閉経すること、1♂1♀で暮らし♂もこどもの世話をすることなど、哺乳動物の標準的な性と対比して語られる。「種差別主義」の障壁を打ち破って、ヒトも動物であるという出発点に立つことによってヒトのセクシュアリティの独自性が見えてくる。進化理論を基軸にして、最新の科学的発見を織り交ぜながらわかりやすく解説されている。それにしても男には乳を出す潜在能力があること、発生的にY染色体の機能の虚弱さなど、男たるものを考えるいい機会にもなった。

 お薦め度:★★★★  対象:自分の性に関心のあるすべての人

【萩野哲 20131010】
●「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」 ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫

 一言でいえば、他の生物と比較して人間の性はいかに珍妙かを考察した書である。チンパンジーなど他の霊長類との比較をすると、人間の特殊性が思った以上に浮かびあがる。排卵時期が相手の男ばかりでなく本人も分からない、という事実もその一例である。女性の閉経が存在し男性では存在しない等、様々な性の問題について所説を紹介し、そして自分の考察を述べ、解決している問題か否か、丁寧な議論を展開している。特に男性の場合は、女性の問題よりも、「男はなんの役に立つか?」という問いに対する解答を知りたくて本書を手に取る人もいて当然であろう。

 お薦め度:★★★  対象:性のなぜ?に対するまじめな答えがほしい人

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