友の会読書サークルBooks
本の紹介「逃げないカワウ」
「逃げないカワウ 中国の鵜飼漁をめぐる謎解きフィールドワーク」卯田宗平著、京都大学学術出版会、2025年11月、ISBN978-4-8140-0614-4、2200円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]
【萩野哲 20260223】
●「逃げないカワウ」卯田宗平著、京都大学学術出版会
著者は長江の漁労調査の際、見たこともない漁法に出会った。鵜飼漁であるが、日本の鵜飼とは全く異なり、鵜は綱に繋がれておらず、自由に泳いで魚を獲り、そして逃げない!鵜は漁船に配置された止まり木にとまっている。中国ではカワウを繁殖させて漁労に使うので、鵜飼漁が始まった昔、雛の飼育過程で経験的に理解した人に対する刷り込みが成立しているようだ。更に、ペア飼育ならびに訓練による追随性の獲得とその後に続く強い刺激による潜水性の促進。これができるカワウの特性と、獲物の全てが利用価値のある中国の魚食文化の存在が鵜飼漁を支えている。
お薦め度:★★★ 対象:面白い漁法に出会い、
生物の特性と人間の文化を実感したい人
【森住奈穂 20260306】
●「逃げないカワウ」卯田宗平著、京都大学学術出版会
著者は民俗学者、みんぱくの先生。中国の鵜飼漁を見て、なぜ逃げないのかと疑問を持ちフィールドワークが始まる。長江流域で伝統的に行われてきた漁法にもかかわらず先行研究は無く、手さぐりで漁船、漁師、カワウ、全てを事細かに記録していく。結論をいえば、人工繁殖によって家畜化されているから逃げない、ということなのだが、本書はカワウと人間とのかかわりを捉える民俗誌であり、最後まで興味深く読むことができる。カワウは潜らされ、獲れた魚は漁師に横取りされ、大変そう。先輩カワウに倣って船を追いかけるようにトレーニングされる若鳥、大変そう。人の近くで魚を鵜呑みしていたばっかりに目をつけられて、家畜として働かされているカワウ。自然科学とは違った視点でカワウを知ることができる。
お薦め度:★★★★ 対象:みんぱく好き
【和田岳 20260306】
●「逃げないカワウ」卯田宗平著、京都大学学術出版会
首に紐をつけず、ウミウではなくカワウを使う中国の鵜飼い。長江沿いの江西省?陽湖を中心にした15年以上のフィールドワークを通じて、中国の鵜飼いの実態をまとめた一冊。
タイトル通りとにかく逃げない。船の止まり木にとまって出漁の時はもちろん、止まり木にとまってバイクで運ばれていても、夜も止まり木にとまったままでも逃げない。逃げないどころか魚を捕って帰ってくる。そのほかにも、人工的に繁殖させて、家禽化されていること。繁殖とは関係ないペアの絆。カワウを使った網への追い込み漁の存在。日本の鵜飼いとは全然違う中国の鵜飼い漁が描き出される。
そうした鵜飼い漁が生業として成り立つ、多様で豊かな淡水魚相。そしてそれを利用する豊かな魚食文化の存在が印象的。
お薦め度:★★★★ 対象:日本の鵜飼いとはまったく違う中国の鵜飼いを知りたい人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]