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本の紹介「粘菌 その驚くべき知性」

「粘菌 その驚くべき知性」中垣俊之著、PHPサイエンス・ワールド新書、2010年5月、ISBN978-4-569-77786-3、800円+税


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【釈知恵子 20101029】【公開用】
●「粘菌 その驚くべき知性」中垣俊之著、PHPサイエンス・ワールド新書

 粘菌には脳はないけれど、カーナビシステムのように、最短経路を導きだせる。気温や湿度の変化のような嫌な刺激を数回繰り返すうちに、嫌な刺激が来そうなときには学習し予測して立ち止まる。そもそも粘菌って単細胞だったんだと基本的なところを知らなかった私も、粘菌が体全体で示す知性(著者曰く)については、なんとなくわかった感じ。なんとなくというのは、途中、計算式が出てきて、読み飛ばしてしまったから。ところどころはなるほどと思ったけれど、1つの物に打ち込んでいる研究者の偏愛で、もっとぐいぐい引き込んでほしかった。

 お薦め度:★★  対象:生き物の「知る力」に興味のある人に

【萩野哲 20101027】
●「粘菌 その驚くべき知性」中垣俊之著、PHPサイエンス・ワールド新書

 粘菌の、アメーバ的な生活からキノコ的な生活までを営む、とっても変なライフサイクルを、南方熊楠の興味を大いに引いたことは有名であるが、本書はこの粘菌の“ネットワーク”最適化の能力に焦点を当てている。餌を2か所に置いた場合、粘菌は当初それらの間に複数ルートを設定するものの、最終的にはその内の最適ルートのみを残す。驚くべきことに、その際、迷いや選択の個性を示すという。これはりっぱな知性であると考えられないか? と著者は説く。

 お薦め度:★★★  対象:ハムレットまたは優柔不断な人

【和田岳 20101028】
●「粘菌 その驚くべき知性」中垣俊之著、PHPサイエンス・ワールド新書

 粘菌研究でイグノーベル賞をもらった著者が、まさにイグノーベル賞をもらった研究を含め、粘菌の能力についての研究を紹介した一冊。
 粘菌の紹介から始まり、多くの部分は、粘菌が迷路を解くこと、最短距離を見つけることができること。そしてそれに基づいたモデルによる新しいカーナビシステムの紹介にさかれている。モデルはかなり難しいけど、難しいところは読み飛ばしてもOK。
 粘菌はカーナビ代わりになるだけでなく、記憶もあるし、予測もするし、迷いもするらしい。脳がなくても随分いろんな事ができるんだなぁ、と感心させられる。これをもって、著者は粘菌に知性があると書いてくれる。ここでいう知性とは、ある程度以上の問題解決能力があというレベルに過ぎない。けっして粘菌に意識があるという話ではないので、気をつけよう。

 お薦め度:★★  対象:粘菌がカーナビ代わりになるってどういうこと?って思った人

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