友の会読書サークルBooks

本の紹介「なぜシロクマは南極にいないのか」

「なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ」デニス・マッカーシー著、化学同人、ISBN978-4-7598-1463-7、2011年8月、2000円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【和田岳 20111223】【公開用】
●「なぜシロクマは南極にいないのか」デニス・マッカーシー著、化学同人

 生物の進化と大陸移動を取り込んだ今時の生物地理学を紹介した本。リンネ、ダーウィン、ウォレス、ウェゲナー、ウィルソン、ダイアモンド。いろんな分野で革命的な仕事をしたこの面々が、みんな生物地理学について書いていると聞かされると、へぇ〜と思う。つかみはばっちり。
 あとは、最新の研究成果を盛り込みつつ、生物地理学の考え方が紹介されていく。全体を通じたストーリーはないので、今時の生物地理学がおよそどんなのか知っている人は、面白そうなページだけ読めば充分。

 お薦め度:★★★  対象:生物の進化と大陸移動説をつなぐとどうなる?と思った人

【加納康嗣 20111222】
●「なぜシロクマは南極にいないのか」デニス・マッカーシー著、化学同人

 科学の多くの分野が専門科学の寄せ集めになり、研究者たちはさらに狭い分野にだけ目を向けるようになっている中で、生物地理学者たちは今もその視野を広げ、スケールの大きなパターンに注目し、地球規模で起こっている原理に光を当てている。現在生物地理学は生命(進化)と地球(プレートテクトニクスと地学)の大統一理論となりえている。ダーウィン、ウエゲナー、デュ・トワ、ジャレット・M・ダイヤモンド(著書に課題図書から落選した「銃・病原菌・鉄」がある)など偉大な生物地理学者の研究業績を紹介しながら解説する。
 「南極海を取り巻く海底にできたひびわれにはじまった南半球の陸地の隔離」によって、生物の現在の分布の多くが生みだされ、動植物や人類の文明に及ぼした影響は測りきれない。南半球になぜ海が多いか、北半球の哺乳類がなぜ世界で圧倒的な優位を誇るようになったか、ユーラシヤ大陸の人々と他の地域の人々の技術的進歩に差が出来た理由など、これは第4章以下終りまで続くテーマであり、読みどころである。

 お薦め度:★★★  対象:なぜそこにその生き物がいるか不思議に思っている人

【萩野哲 20111221】
●「なぜシロクマは南極にいないのか」デニス・マッカーシー著、化学同人

 この本のタイトルの問いに一言で答えると、それは生物地理学の法則に従っているからである。著者は生物地理学を「創造の要」として最重要の学問分野と位置付け、その黎明期から最近の話題までの事例を取り上げ、この問いに答えている。ダーウィン、ウォレス、ウェーゲナーら偉大な先人は生物の分布からその障壁を発見し、大陸移動の証拠を見出したこと。このような大陸の断裂は、その後の生物の運命を決定づけたこと。本書をひも解くことにより、読者は地球と生命がともに進化しているという壮大な事実を受け止めることができる。

 お薦め度:★★★  対象:地球と生命を中心とした幅広い知識の探求者たち

[トップページ][本の紹介][会合の記録]