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本の紹介「なぜ君たちはグルグル回るのか」

「なぜ君たちはグルグル回るのか 海の動物たちの謎」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号、700円+税


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【森住奈穂 20230223】【公開用】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 小型の記録計や電波発信器を動物の体に取りつける「バイオロギング」という手法で、広範囲を移動する動物たちの動きを調べている著者。ウミガメが産卵のために決まった島へ戻ってくる習性を調べた調査で、同じ場所でグルグル回っていることが判明。さらにジンベイザメやオットセイ、キングペンギンなども回っていることが判明。果たしてこの行動にはどんな意味があるのだろうか?学生と先生の対話形式で進む物語は野外調査の苦労や楽しさも垣間見られて、謎を解き明かしてゆくワクワク感を共有できる。あと、犬にできるなら私にもできそうに思う。

 お薦め度:★★★  対象:悩んだときに無意識にグルグル回っているひと
【冨永則子 20230220】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 海で暮らす生き物たちが、どのようにエサを取り暮らしているか、どれほどの範囲を移動しているか… それを調べるために生き物に機械を付けて調査する「バイオロギング」という手法がある。そのバイオロギングを利用して、現地での若手研究者の調査の実情を紹介しながら、研究とは何か、どのようにして研究者になっていくのかが描かれている。しかも、絵を描いているのは本物の現役若手研究者。“なぜグルグル回るのか?”その答えが分かるというより、研究者になっていく過程を知ることができる。

 お薦め度:★★★  対象:生き物の行動に興味がある人に。研究者になりたいと思っている人に
【西村寿雄 20230218】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 海の動物の謎の行動を丹念に記録しながらいろいろ考えていく過程をマンが調に描いた本で楽しく読める。この本は、オオミズナギドリや海ガメ、ゾウアザラシなどの行動から次々と疑問を解決していく過程が描かれている。
 若い研究者は、動物たちは、海の上でどうやって帰りたい島の方角がわかるのかと疑問を持って調べる。ウミガメは地磁場を感じているのではないか、と仮説を立てる。GPSの記録を見ると海ガメは島に帰る前グルグルと海中で回ってから方角を決めていることがわかった。予想はますます信憑性を持つ。研究途中らしいがその経過が面白い。

 お薦め度:★★★  対象:動物行動に興味のある人
【西本由佳 20230218】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 生きものの行動や位置を記録する装置をつけて放したウミガメが、なぜか同じ位置でグルグルと回っていた。多いときは76回も。当然、これは何をしているんだろうと、疑問に思う。他の海獣の研究者たちに聞いてみたところ、同じようにグルグル回る行動が観測されていた。サメやオットセイやペンギンなど。動物たちが磁気を感じる能力があることは知られている。そして、潜水艦が地磁気を測定するときに、すべての方位を向いて磁気の強さを測るため、潜りながらグルグル回ることがあるという。動物たちは地磁気を感じて自分の行く方向を探るためにグルグル回っているのだろうか?

 お薦め度:★★★  対象:ハトや渡り鳥がどうやって方向を知っているのか気になる人に
【萩野哲 20230209】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 著者たちはワタリアホウドリ、キングペンギン、ミナミゾウアザラシ、オオミズナギドリ、アオウミガメなどの行動をバイオロギングで調査している。その結果、動物たちは数百〜数千kmも離れた餌場に行き、そして戻って来ることがわかった。そんなに離れているのにどうして帰って来れるのか?更に同じ時刻に!研究を進めるうちに、これらの動物は目的地に戻って来る途中で同じ場所でグルグル回っていることがわかってきた。これは地磁気を感じて方向を特定する行動らしい。だから、人工的に磁気を変え、動物の進む方向を変えることもできる。犬も地磁気がわかるんだって!方向音痴の私には大変羨ましい能力だ。研究者兼イラストレーターの木下さんの絵も大変わかりやすい。

 お薦め度:★★★  対象:バイオロギングの成果を簡潔に知りたい人
【和田岳 20230221】
●「なぜ君たちはグルグル回るのか」佐藤克文文・きのしたちひろ絵、福音館書店たくさんのふしぎ2022年11月号

 バイオロギングの研究者である先生が、学生2人をあちこちの現場に派遣して、その成果をネタにやり取りすることで話が進む。
 学生たちが最初に行くのは、岩手県の船越大島のオオミズナギドリの調査。ビデオ映像から採食行動の様子、GPSデータから採食への行き帰りのコースが明らかになる。
 続いて行くのは、コモロ諸島と小笠原諸島のウミガメ調査。そこでウミガメが島に戻る前にグルグル回ることを発見。世界のさまざまな研究者に尋ねると、他の海の動物もグルグル回ることが明らかになる。地磁気で方向を見定めるための行動かなというアイデアが出て終了。潜水艦やイヌもグルグル回るのなら、オオミズナギドリもグルグル回りそうなもんだけど。
 オオミズナギドリの繁殖地での調査の様子の描かれ方は、とてもリアル。ウミガメの調査でも、コモロ諸島では毎日バナナばかりという食生活など、現地調査の雰囲気が伝わるのが良い感じ。

 お薦め度:★★★  対象:バイオロギング調査の雰囲気を知りたい人
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