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本の紹介「鳴く虫観察事典」

「鳴く虫観察事典」小田英智文・松山史郎写真、偕成社、2007年3月、ISBN4-03-526600-0、2400円+税


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【西村寿夫 20070424】
●「鳴く虫観察事典」小田英智文・松山史郎写真、偕成社

 このシリーズの特徴は、身近な生きものの生態を見事に写し出してくれることにある。この本は、身近な昆虫の微細な器官を大きく写しだして、その不思議さを堪能させてくれている。ページをめくるごとに「そうか、この虫の器官はこんなにうまくできているのか」と、しばし驚かされる。
 小さな生きもので疑問なのは〈どんなしくみでオスとメスが出会うのか〉である。鳴き声の他に、特有の臭いでメスを引き寄せるという。野原で微細な臭いを嗅ぐ能力なんてどこに具わっているのだろうか。次は、見なれたスズムシの交尾の写真。え?なんだ。白い玉は?「精球」という〈ボール〉をオスからメスに受け渡ししているのだという。なんで、そんな〈高等?な技〉を使うのだろうか。次ぎに出てくるコオロギの産卵管の構造がまた異彩だ。「管」といって〈管〉ではない。ツユムシなどの産卵管はまるで〈のこぎり〉だ。こんな器官でイネ科の葉の中に卵を産み付けていくという。すばらしい〈技能〉の持ち主だ。「動物進化の奥深さ」をしみじみと感じさせてくれる本である。

 お薦め度:★★★  対象:小学生高学年以上

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