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本の紹介「虫のしわざ観察ガイド」

「虫のしわざ観察ガイド 野山で見つかる食痕・産卵痕・巣」新開孝著、文一総合出版、2016年1月、ISBN978-4-8299-7203-8、1800円+税


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【西村寿雄 20160412】【公開用】
●「虫のしわざ観察ガイド」新開孝著、文一総合出版

 野外を出歩いていると、しばしば虫の食痕や虫こぶなどにお目にかかる。この本は、そうした〈虫のしわざ〉について、くわしく紹介した観察ガイドである。〈虫のしわざ〉には「食痕」のほかに「巣」、「マイン」と呼ばれている〈絵かき〉模様、「糞」、「虫こぶ」、「産卵痕」などがある。これら虫のフィールドサインは、多種多様でその種は特定できにくいが、この本を見ていくと〈虫のしわざ〉の主は推測がつくようになりそうだ。まずは、パッと見た目の印象で見当がつけられるように、「あわせ」「まきまき」など24項目の視点が書かれている。本文では、〈草花〉〈ササ・タケ〉〈樹木〉〈地面や崖〉〈水辺〉〈人工物〉などの場面毎に〈虫のしわざ〉がつぎつぎと紹介されていく。まあ、こんなにも〈虫のしわざ〉があるのかと思うほど、多彩な〈虫のしわざ〉本である。見ているだけでも楽しめる。

 お薦め度:★★★★  対象:虫好きな子どもと大人
【和田岳 20160414】【公開用】
●「虫のしわざ観察ガイド」新開孝著、文一総合出版

 虫が葉っぱを食べた跡、木や実に開いた孔、葉っぱの模様、しおれた葉っぱ、巻いた葉っぱ。巣やさなぎや虫こぶ。さまざまな虫が植物に残した跡を“虫のしわざ”と称して、一堂に集めた画期的な観察ガイド。
 考えてみれば、野外では虫の姿を見つけるよりも、虫のしわざの方が見つけやすい。つまり、虫のしわざを知れば、虫との出合いに役立つのだけど、このガイドをながめると、虫のしわざに注目すること自体が充分楽しいってこと。
 トホシハムシがウリの葉っぱを食べた跡は、よく見るととても綺麗。サクラフシアブラムシがサクラにつくる虫こぶは、もう一度花が咲いたよう。木の根元に大量に落ちているツブツブがゴマフボクトウ幼虫の糞だと分かると、とてもすっきり。コウモリガの幼虫が、樹液レストランをつくるという話は、とても面白い。
 ただ残念ながら、この本を持っていけば、野外で見られる虫のしわざの犯人がすべて分かるかというと、たぶん全然足りない。虫こぶにも、葉っぱの食べ跡にももっと種類がある。でも、虫のしわざに興味を持って、犯人を捜すきっかけにはなるんじゃないかな。

 お薦め度:★★★  対象:植物に残された虫の痕跡が気になる人
【萩野哲 20160411】
●「虫のしわざ観察ガイド」新開孝著、文一総合出版

 野外に残る虫の生活の痕跡。本書はそのような事例を写真で紹介し、その正体が何か、ヒントを与えてくれる。葉の食べ方ひとつをとっても様々である。端から齧るもの、中央から穴を開けるもの、葉脈を残すもの、葉の内部を食べるもの、葉を巻いてから食べるもの・・・。その特徴をよく観察すると、誰のしわざか見えてくる。痕跡とともにその正体の主の写真も添えられているので、今まで見過ごしていた虫たちの様々な生きざまを、本書を持って野外に出て確かめたくなってきた。

 お薦め度:★★★  対象:野外で虫の生活の一端に触れてみたい人
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