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本の紹介「虫食む人々の暮らし」

「虫食む人々の暮らし」野中健一著、NHKブックス、2007年8月、ISBN978-4-14-091091-7、971円+税


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【萩野哲 20080222】【公開用】
●「虫食む人々の暮らし」野中健一著、NHKブックス

 この手の本の著者は、@第三者的立場をとり、「・・・だってさ」という人と、A全くはまり込んでいる人があるが、本書の著者は完全に後者。虫を食べる描写が生き生きしていて気持ちがよい(悪い?)。とても勉強になったのは、類書に昆虫食はタンパク源補給のような表現があるのを本書では完全に否定し、何度も嗜好品と説明している点である。つまり昆虫食者は食うに困っているわけではない。それほどおいしいのか昆虫は!! でも、カメムシのにおい取りをしながら顔を背けている写真(113ページ)はそこまでしてまで・・・と笑ってしまう。

 お薦め度:★★★★  対象:あらゆる食物に食べ飽きた人

【加納康嗣 20071220】
●「虫食む人々の暮らし」野中健一著、NHKブックス

 昆虫食は決して下手物食いではない。また貧しさからでもない。各地の昆虫食それぞれに細やかな知識体系があり、多様性がある。ラオスの例を挙げるなら、雨期に水没する田圃の真ん中にカメムシが発生し、落ち葉を落とす立木が残されている。森と田圃がモザイク状に入り組んで配置されている。水牛が遊び自然と一体になったこれら「野良」には、季節によってフンチュウやコオロギ、イナゴ、カメムシ、ツムギアリ、ヤゴなどが出現し、捕獲され、売買され、都会に流通していく。時には肉に匹敵するかそれ以上の値段で取引される。栽培・養殖ものより値段が高く、「野生の物の方が体にいい」という揺るぎない信念がある。人間と自然のつきあいの多様性がここにはある。
 昆虫と人をめぐる旅の本である。人の多様性を知るうえで興味が尽きない。読みやすい。
 蛇足だが、生き物の糞の処理について面白い相似性があるので紹介しよう。カマキリはオンブバッタの腸を食べ残す。チョウゲンボウはわざわざバッタの腸を抜き出す。人間はフンチュウの幼虫を蛹化寸前まで待って、体の中のウンコがなくなってから食べる。イナゴはウンコを出してから料理する。それぞれの生物が糞の処理について英知を絞っている。当たり前か!

 お薦め度:★★★★  対象:昆虫や民俗に関心のある方

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