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本の紹介「虫のすみか」

「虫のすみか 生きざまは巣にあらわれる」小松貴著、ベレ出版、2016年6月、ISBN978-4-86064-477-2、1900円+税


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【萩野哲 20160823】【公開用】
●「虫のすみか」小松貴著、ベレ出版

 著者の超豊富な昆虫知識とすばらしい写真が詰まった一冊。どの項目もすばらしいが、キノコシロアリとオオシロアリタケの関係(102〜109ページ)のように、完全にお互いに依存する共生関係の事例や、景色に溶け込む越冬巣を作るホシミスジなどの事例(138〜146ページ)が大変気に入った。どれくらいの年月でこのような事例が進化したのだろうか? また、著者お得意のアリ関係で、同じコガネムシの仲間でも、エゾアカヤマアリにバラバラにされるセマダラコガネがいる(77ページ)一方、ツムギアリの猛攻をものともせず巣内に侵入して幼虫を食い荒らすインドシナエグリホソハナムグリのようなヤツもいる(228ページ)のだ。昆虫の世界は奥深い。
 それぞれの項目は、「概要」、「捜す」、「よもやま話」で構成されており、それぞれを主に説明する「概要」と「捜す」も大変楽しいが、「よもやま話」も非常に含蓄に富んでいる。

 お薦め度:★★★★  対象:奥深い昆虫の世界をもっと覗いてみたい人
【冨永則子 20160824】
●「虫のすみか」小松貴著、ベレ出版

 巣を構えて生活する虫としては、一般的にミツバチやアリがよく知られているが、それに負けず劣らずとても面白い巣を作るのに、なかなか顧みられることのない身近で見られるムシ(昆虫類以外の節足動物も含む)たちにスポットが当てられている。
 著者は一部マニアには『裏山の奇人』として知られる小松貴さん。本著でもその奇人ぶりがよく分かる。 ムシの生態だけでなく、「探す」として、どのようにそのムシを観察するか、捕まえるかといった方法が紹介されている。いずれも小松さん自身が観察し捕まえたからこその具体例である。
 奇人は、かつて日本の有名な昆虫学者が「ハチやアリは人間のように洗練された高度な社会を持っている利口ムシ。それ以外は、ただひとりで好き勝手に食べて寝て暮らすだけの馬鹿ムシ」と言ったことに対して、群れなければ何ひとつまともな生活が出来ず、ひとりにされれば惨めに野垂れ死ぬだけの社会性昆虫の方がよほど馬鹿ムシと真っ向から否定している。さすが奇人! これからも奇人としてムシの世界を探求し続けてほしい。

 お薦め度:★★★★  対象:フツウの虫には物足りなさを感じてる虫好きに、奇人に近づきたい恐いもの知らずな人に
【六車恭子 20161028】
●「虫のすみか」小松貴著、ベレ出版

 「裏山の奇人」に次ぐ著者、二冊目に当たる昆虫本!前作の過剰な思い入れは整理され、挿入された写真も鮮明で美しく、著者の蘊蓄や視野の確かさに堪能できる好著。
 「彼らの巣の仕組みはどれもが長い進化の歴史のなかで生み出され、洗練されていったすえたどりついたもの」、虫のすみかはその一つの金字塔でもあろう!その一つ一つを紹介していく著者の筆遣いはまさに異次元への招待状のようだ。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物好きならだれでも
【森住奈穂 20160825】
●「虫のすみか」小松貴著、ベレ出版

 副題は「生きざまは巣にあらわれる」。「生きざま」という言葉選びが奇人らしい。そう、著者は『裏山の奇人』小松貴さん。本書においてもその奇人ぶりは遺憾なく発揮されている。登場するのは普段隠れ暮らしている「日陰者」の虫。それぞれの探し方とよもやま話がセットになっていて、ハチに刺され、アリに蟻酸を飛ばされ、人間には通報される、奇人の生きざがまた楽しい。オールカラーの写真の美しさもさることながら、読みものとしてもものすごく楽しい。個人的には、「動物にすむ虫-鳥肌をもよおすものたち」のクモバエや、怒鳴られ蹴られて追い出された著者のくだりが大好きです。

 お薦め度:★★★★  対象:小松ファン。またその予備軍
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