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本の紹介「ミクロな化石、地球を語る」

「ミクロな化石、地球を語る 微化石に刻まれた絶滅と再生」谷村好洋著、技術評論社、ISBN978-4-7741-4426-9、2010年11月、1580円+税


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【村山涼二 20110222】【公開用】
●「ミクロな化石、地球を語る」谷村好洋著、技術評論社

 深海底に降り積もったミクロンサイズの小さい化石(微化石)の美しい精巧な形を、多くの写真が示している。その微化石の種類が地球での地質年代の決定に大きな役割を果たしている.日本海の形成と日本列島の生成の過程(途中での日本海の淡水化など)を微化石が示している.海洋大循環、日本をめぐる海流の変化も微化石の調査で分かる.最近の河川よりの流入水質の変化も堆積プランクトン珪藻から分かる。著者は、微化石の観察で、「ミクロな化石が語る地球は、日常の中の楽しい非日常を提供してくれる」と述べている。自分で微化石を探しに行きたくなる。

 お薦め度:★★★★  対象:地球の歴史に関心のある方

【中条武司 20110224】
●「ミクロな化石、地球を語る」谷村好洋著、技術評論社

 時代決定、古環境、堆積速度、古海洋、そして生物の進化・・・過去の地球環境を語る上で、微化石はなくてはならない研究対象である。そしてその造形美の美しさも生命の不思議さを感じさせる。微化石の研究史から現在の課題、最新の深海掘削の成果まで盛りだくさんな内容。
 ひとつのテーマを短くわかりやすくまとめている分、「えっ、それで」という話が少々あり。そういう意味で総論と個別の話が少し混在している点がマイナス。とはいえ、口絵の美しさはすばらしい。個人的には面相筆と有孔虫の対比写真がヒット。

 お薦め度:★★★  対象:古生物学の醍醐味を味わいたい人

【西村寿雄 20110222】
●「ミクロな化石、地球を語る」谷村好洋著、技術評論社

 ページをめくると数々のミクロの化石が飛び込んでくる。「こんなのが海底にうようよいるのか」と、まずその姿に引き込まれる。こんな微化石(有孔虫、放散虫、珪藻、石灰質ナノプランクトンなど)が、今ぞくぞくと発見されているのだという。しかも、それらが新たな地球史を解明する鍵になっている。その他、6500万年前に小天体が衝突したことが深海底の微粒子から証明されるようになった。この微化石、微粒子の研究は、日本海誕生のなぞや複雑な海流のなぞも解明しつつある。今まさに進みつつある深海最先端の研究が〈体験〉できる。

 お薦め度:★★★★  対象:地球史に興味のある人(高校生以上)

【萩野哲 20110217】
●「ミクロな化石、地球を語る」谷村好洋著、技術評論社

 海底に降り積もる顕微鏡的なプランクトンなどが化石となったものが“微化石”。これらを研究することによって、プランクトン相の遷移はもちろん、例えば日本海がいつ頃閉じて淡水化したかや、黒潮の流路の変化などの地球史を読み取ることができる。そのための基礎として、プランクトンが沈降、沈殿するのに要する時間の計測や、どの程度海流に流されるか等の研究法にも触れられている。スケールの小さな対象に基づいたスケールの大きなお話が興味深い。

 お薦め度:★★★  対象:広く化石に興味がある人

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