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本の紹介「マンボウのひみつ」

「マンボウのひみつ」澤井悦郎著、岩波ジュニア新書、2017年8月、ISBN978-4-00-500859-9、1000円+税


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【西村寿雄 20171220】【公開用】
●「マンボウのひみつ」澤井悦郎著、岩波ジュニア新書

 この本には、マンボウについてのくわしい解説と悪戦苦闘するマンボウ研究記が合わせて綴られている。初めには体のつくりのくわしい解説と系統的なマンボウの位置づけが書かれている。「V章マンボウの謎」からいよいよ著者のマンボウ研究歴の話が始まる。大学でマンボウ研究者になったとき運良く宮城県の漁船に乗りこみ巨体マンボウに遭遇して研究の熱が上がる。著者は「マンボウ」以外に別種として「ウシマンボウ」を命名する。そのことが魚類学雑誌などに載せられてウシマンボウの認知度は日本国中に広まった。仮説と検証をくりかえすマンボウ研究のおもしろさと苦労話を語る。バイオロギングなど新たな研究手法やマンボウと人がつむいできた歴史なども織り交ぜて楽しい読み物にしている。中高生以上向き。

 お薦め度:★★★  対象:生き物研究が好きな中学生から


【萩野哲 20171026】
●「マンボウのひみつ」澤井悦郎著、岩波ジュニア新書

 マンボウという魚の名前は、その変な形や、どくとるマンボウ航海記や、いろんな“伝説”や、最近では各地の大型水族館で飼育されているので、知っている人は多いだろう。しかし、その巨体ゆえに今まであまり研究は進んでいなかった。そんなマンボウを子供の頃から好きだった著者は、マンボウの謎をいろんな視点から解明しつつあり、それらの成果を本書で紹介した。例えば、マンボウ属(Mola)の魚は現在3種類確認されており(ウシマンボウ、マンボウとC種)、その他のマンボウの仲間にはヤリマンボウやクサビフグがいること、マンボウには尾鰭は(腹鰭も)なく、体の後端は舵鰭という背鰭と尻鰭の一部が変形してできたものであり、背鰭と尻鰭で遊泳すること、マンボウの筋肉は極端に言うと全身“縁側”で、皮膚と筋肉の間は分厚いコラーゲンで覆われて体を保護していること、繁殖生態は未だよくわかっておらず、“魚類中最高産卵数3億個”は怪しいこと、などなど。著者の研究の進展には、それまでマンボウを研究していた先達と、DNA解析やバイオロギングなどの研究手法の進展の貢献大であったけれども、まだまだ不明点の多い魚である。著者のマンボウへの愛が語られて楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:マンボウの真実に近づきたい人

【森住奈穂 20171221】
●「マンボウのひみつ」澤井悦郎著、岩波ジュニア新書

 存在や形はなんとなく知っているものの、謎の多い魚マンボウ。本書は32歳のマンボウ博士が、マンボウの魅力を一般向けに発信すべく、およそ200年ぶり(?)に世に送り出したマンボウ本。体のつくり、現生種と化石種、生態、マンボウと人との関わり(地方名から都市伝説の解読)まで網羅する。マンボウは海面でぷかぷか浮いている、のんびりした魚のイメージがあったが、深海までもぐる激しい上下移動や、季節性の回遊をすることがわかってきたとのこと。海面でぷかぷかしているのも、深海にもぐって冷えた体を温めているらしい。そんなマンボウに、シャチやイルカは体当たりして遊んでいるらしい。お気の毒に…。のんびりとは程遠い生活、誤解してごめん。

 お薦め度:★★★  対象:マンボウのことをよく知らないひと


【和田岳 20171220】
●「マンボウのひみつ」澤井悦郎著、岩波ジュニア新書

 マンボウ大好きなマンボウ研究者が、マンボウについてのあれやこれやを書きまくった一冊。帯にはさかなクンのイラスト。イントロから目次までは、背景までカラーでマンボウなど魚のイラスト付き。本全体がマンボウマンボウしているのともあいまって、とにかく楽しげ。そして、なぜか各パートの最後に内容を要約した川柳付き…。
 本の中身もマンボウマンボウしていて、マンボウの体の特徴とか、日本で見られるマンボウには、マンボウとウシマンボウがいて。などなど、マンボウに関するあれやこれやがいっぱい書いてある。
 ただ、マンボウは3種に分かれるという結論が、この本では研究として決着してないようなのが、少し気になる。

 お薦め度:★★  対象:マンボウが気になる人


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