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本の紹介「幻のネズミ、消えたY」
「幻のネズミ、消えたY 性の進化の謎を追う」黒岩麻里著、岩波科学ライブラリー、2025年9月、ISBN978-4-00-029737-0、1600円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【萩野哲 20260409】【公開用】
●「幻のネズミ、消えたY」黒岩麻里著、岩波科学ライブラリー
XY型の性染色体を持つ哺乳類の性はY染色体にあるSRY遺伝子でオスが決定されているというのが常識であるが、Y染色体がヒトも含めて退化傾向にあるという。オスはいなくなるのか?ところが、既にY染色体を失っている動物がいる。アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミ。著者は研究者人生をかけて、多くの仲間と共に、統計的に有意な個体数の確保もままならないこれら稀種の性決定法を追い求めた。そして遂に、SRY遺伝子のターゲットであるSox9遺伝子の上流にオス特異的な重複配列が存在し、これによってアマミトゲネズミでもオスに分化することが可能であることを発見した。Y染色体を中心に、遺伝学のバックグラウンドや研究法を学べる、難しいけど楽しい推理小説のような1冊。
お薦め度:★★★ 対象:男性の未来を憂慮している人
【森住奈穂 20260417】
●「幻のネズミ、消えたY」黒岩麻里著、岩波科学ライブラリー
Y染色体がなくてもオスが生まれてくる、不思議な哺乳類アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミ。日本固有種で 絶滅危惧種で天然記念物であるため、研究材料の入手がまずもって困難なのだが、そんななか著者はおよそ20年前に研究をスタート。さまざまな壁を乗り越え、Y染色体がなく精巣決定因子であるSRY遺伝子もない哺乳類で、どのように性決定が生じるのかを世界で初めて明らかにする。それにしても性染色体進化の柔軟性に驚く。それらを実証する研究の難しさにも。全部で3種いるトゲネズミ属。もう1種のオキナワトゲネズミはY消失を免れているのだが、その方法も大変興味深い。果たして哺乳類の性に今後どのような進化が起きるのか。そのヒントを求めて著者の探究は続く。
お薦め度:★★★ 対象:性の進化の不思議に触れてみたいひと
【和田岳 20260417】
●「幻のネズミ、消えたY」黒岩麻里著、岩波科学ライブラリー
哺乳類なのにY染色体のないトゲネズミ。学生時代に出会って、現在に至るまで、性染色体についての研究を振り返る。
トゲネズミの存在を知り、その研究をもくろむもサンプルの入手に苦労する話から始まり。Y染色体研究の歴史、すなわちSRY(sex-determining region Y)遺伝子探し、そして退化するY染色体の話。Y染色体を失ったアマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミ、巨大Y染色体を持つオキナワトゲネズミ。Y染色体がないなら、SRY遺伝子はなく、代わりになにが性を決定しているのかを明らかにしようとする。注目したのは遺伝子重複。性転換を起こさせることができれば、はっきりするのだけど…。
トゲネズミについて、哺乳類の性染色体について、染色体研究について、いろいろ勉強になる。一方で、なにが性を決定しているのかははっきりしないまま終わってモヤモヤ。専門用語をろくに説明しないまま大量投入するスタイルは、いっそすがすがしいとも思った。
お薦め度:★★ 対象:学術用語が大量に出てきても、上手に読み飛ばせる人
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