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本の紹介「恐竜最後の日」

「恐竜最後の日」ライリー・ブラック著、化学同人、2024年8月、ISBN978-4-7598-2379-0、2800円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【中条武司 20250429】【公開用】
●「恐竜最後の日」ライリー・ブラック著、化学同人

 隕石衝突と恐竜の絶滅について語る本やテレビは多いが、その後の生物の回復まで触れられているものは少ない。古生物界で圧倒的人気者の恐竜に比べて、その後に現れる小さな哺乳類では見栄えがしないからだろう。本著は隕石衝突前から衝突の瞬間、一時間後、一日後、一ヶ月後、一年後…と時間の流れとともに地球環境や生物がどのように絶滅そして回復していったかを、研究結果をベースにしながらも、さも自分がその場にいるような語り口で述べていく。著者自身も述べているように、この物語は想像の部分も多く含まれているが、その元となる部分は最新の知見から導かれている。なぜ非鳥類型恐竜は絶滅し、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類の一部が生き延びたのか、これくらいフィクションを交えて書かれる方が理解しやすいかもしれない。ただ最終章で唐突に出てくる自分語りはかなり違和感あり。

 お薦め度:★★★  対象:K/Pg境界で生き延びた生物に興味のある人
【萩野哲 20250415】
●「恐竜最後の日」ライリー・ブラック著、化学同人

 66,043,000年前、地球に衝突した小惑星は、恐竜を始めとした75%の生物種を絶滅させるに至った。本書はその小惑星の衝突直前、衝突時、衝突1時間後、1日後、1月後、1年後、100年後、1000年後、10万年後、100万年後の情景を、それぞれ主人公を置いて空想している。衝突で恐竜のような地中や水中に隠れることのできない動物や植物たちの運命はどうなったのか、気候はどう変化していったのか、そして哺乳類はどのように繁栄していったのか?
 直径11kmの小惑星が、恐竜全盛期というタイミングで、地球上のユカタン半島という場所に45度という角度で落下した偶然は、現在の人類の繁栄につながり、この絶滅劇の情景を歴史的科学的に再現・理解し、記録する能力を与えた。人類がその幸運を今後も生かし続けることができるのか、換言すると小惑星の衝突が吉だったのか凶だったのか、今問われているような気がしてならない。

 お薦め度:★★★  対象:小惑星が変えた人類の幸運をあらためて理解したい人
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