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本の紹介「クマゼミから温暖化を考える」

「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書、2016年6月、ISBN978-4-00-500833-9、820円+税


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【六車恭子 20161028】【公開用】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 身近な生き物が学問に値する、科学する楽しみを教えてくれる好著。都市の温暖化が様々な問題をはらみ、その具体例は何か?時代の変遷から浮上してきたのが、誰でも知っている夏の風物誌、セミの変遷!
 なぜアブラゼミが減ってクマゼミが多くなったのか?温暖化を土壌の乾燥度ととらえて、セミの生活環から何年にもわたる実験を経て、都市の自然を解明していく!誰もが知っているカードが科学的裏付けを得て現状がつまびらかにされるのだ!

 お薦め度:★★★  対象:身近な自然に興味のあるかた
【西村寿雄 20161025】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 大阪などで夏にみられるクマゼミの異常繁殖は、きっと地球温暖化が原因だろうとだれしも推測する。昆虫生理学研究者の著者は、クマゼミの生態研究から地球温暖化とクマゼミ繁殖の関係について、ひとつひとつ実験的に確かめていく。セミは冬を卵で過ごし翌春に幼虫になって地下にもぐり平均7年目ぐらい夏に地上に出て成虫となる。そのパターンを考えた上で、クマゼミが大阪という都会で年々増えている原因を数量的に突きとめていく。著者たちは、たんに〈夏の平均気温が高くなったからクマゼミが増えた〉とは簡単に結論に結びつかないと説く。〈冬の寒さが緩んできたからだろうか〉〈都市の乾燥化にあるのだろうか〉〈いや、都会地での土の硬さが関係しているのだろうか〉…さまざまな要因をさぐりながら、クマゼミ繁殖の過程をつめていく。その過程が楽しく読める。

 お薦め度:★★★  対象:クマゼミの異常さに関心のある人
【西本由佳 20161023】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 クマゼミが大阪で数を増やしている。それは温暖化のせいではないかという人たちがいる。著者たちは研究者として、その間に立って、さまざまな調査や実験をくりかえし、ていねいにデータを集めていく。科学者として誠実な態度というものを、先人を見て学ぶのは、大切なことだと思う。

 お薦め度:★★★  対象:生きものの研究をしたいと思っている人
【萩野哲 20161026】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 この数十年で、大阪都市部ではクマゼミが著しく増加した。果たして温暖化はクマゼミの増加に関係があるのか、著者はその研究を通して考察している。温暖化についても、それを肯定する人と否定する人両方の立場を解説していてわかりやすい。クマゼミの増加については、単純に気温の上昇のみならず、冬の寒さや夏の乾燥状態、梅雨との関係、更には土の硬さや植樹される木の種類などから解き明かしていく。同様に増加している他の昆虫との比較も踏まえており、いろんな角度からの考察が楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:昆虫の変遷や温暖化の影響について興味がある人
【森住奈穂 20161027】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 クマゼミが増えた。アブラゼミが減った。それは地球温暖化のせいだという。本当か。著者はこの問いに科学者として答えを出すため、学生や博物館学芸員、また市民とともに何年間にもわたって実験・観察を行い、科学的根拠を積み上げてゆく。今夏、田舎に暮らすいとこが大阪市内に出てきた折、セミといえばクマゼミしかいないことや、鳴き声の音量、そして密度に驚いていた。本書を読んでおけば、「どうして大阪にはこんなにクマゼミが多いの?」という疑問に答えられたのに〜。あのすごい密度で暮らしていける謎の方も知りたいなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:科学的な答えの出し方を知りたいひと
【和田岳 20161028】
●「クマゼミから温暖化を考える」沼田英治著、岩波ジュニア新書

 タイトル通り、近年のクマゼミの増加は、地球温暖化と関係があるのかを検討していく。近年、大阪などでクマゼミが増えており(第1章)、いろんな害ももたらしていること(第2章)を実質的なイントロとして、まずは、温暖化とは何か(第3章)、温暖化をめぐるさまざまな立場の人の考え方(第4章)、温暖化の影響を受けた昆虫(第5章)と地球温暖化問題を紹介していく。続いて、自らのセミ研究の歴史を振り返る(第6章)。そしていよいよ本題。どうしてクマゼミが増えたかを調べていく。冬の寒さ(第7章)、夏の乾燥(第8章)、土の硬さ(第9章)、梅雨との関係(第10章)。最後にまとめ(第11章)。地球温暖化や都市化がクマゼミの増加に関係あるんじゃないかと。でも、他の考え方も軽く紹介(鳥との関係、植えられる樹種との関係)。
 真面目な著者の人柄が伝わってくる一冊。

 お薦め度:★★★  対象:クマゼミが増えた理由が気になる人
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