友の会読書サークルBooks

本の紹介「昆虫にとってコンビニとは何か?」

「昆虫にとってコンビニとは何か?」高橋敬一著、朝日選書、2006年12月、ISBN4-02-259912-X、1200円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【加納康嗣 20070625】【公開用】
●「昆虫にとってコンビニとは何か?」高橋敬一著、朝日選書

 著者はなかなかのマニア、知らない甲虫やカメムシの名前がずらずらと登場し、採集者としての経歴は半端ではない。そのすごさは、誰もいない山の中で骨と皮になった人間の死体に遭遇したとき、死体をそっとひっくり返してコブスジコガネなどの珍虫を探したくなる衝動を抑える自信がないとまで言い切るところでも明らかだ。とはいえ、「昆虫と文明」について該博な知識を披露して28事例を開陳する深さを兼ね備える。『地球史上生物種が少なくとも5割以上絶滅した大絶滅が5回は起こっており、しかも毎年1万種以上もの生物種が消えている可能性が指摘される「完新世の大絶滅」は確かに起こっていることを認めざるえない。なのに、特に「何かの目的のために生まれてきたわけでない」人間が、資源や未来がまだ無限であった時代に生まれた本能を持ち続ける限り、それはとてつもなく大きな重荷になり、本能と現実との乖離があまりにも大きくなれば、自らの絶滅を招くことは必定であろう』と述べる。すべて納得して本を閉じた。

 お薦め度:★★★  対象:身近な文明、人生、自然を思索したいあなた。

【萩野哲 20070219】
●「昆虫にとってコンビニとは何か?」高橋敬一著、朝日選書

 本書は28章にわたり「昆虫にとって・・・と何か?」と、昆虫の名を借りた、著者の
フィルターを通して昆虫を取り巻く事象について、これらが昆虫の世界に及ぼしている影響、そして変化を考えている。特に「昆虫マニア」(=標本箱に死んだ昆虫を並べることを目的として、ある程度の数の昆虫を殺して集める人)と「昆虫採集禁止論者」(=昆虫採集を禁止することによって、昆虫類の減少・絶滅を防ぐことができると考えている人たち、新種発見、あるいは生態解明への昆虫マニアの大きな貢献については興味のない人たち)とは、最も著者の本音が出ているようで楽しい(確かに両者は理解し合えませんな)。

 お薦め度:★★★  対象:狭義に「昆虫マニア」の人、広義に「昆虫採集禁止論者」以外の人

【和田岳 20070220】
●「昆虫にとってコンビニとは何か?」高橋敬一著、朝日選書

 「昆虫にとって※※とは何か?」というお題でエッセイが並び、合間にはカメムシ類を中心にした昆虫紹介コラム。帯には、”ちょっとひねくれた自然論”とある。編集者もそうとしか表現できなかったかと思うと笑える。
 中身はひねくれつつも真面目。それぞれのお題について、昆虫にとって何なのかを、それなりに答えようとはする。もちろん”なんの関係もない”という答えがあったりする。外来昆虫についての立場には同意できないが、その他の点についてはほとんど同意できてしまう。そんな自分もひねくれ者なのか〜、と再発見。

 お薦め度:★★  対象:ちょっとひねくれた角度からの考え方を垣間見たい人

[トップページ][本の紹介][会合の記録]