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本の紹介「木と動物の森づくり」

「木と動物の森づくり」斎藤新一郎著、八坂書房、4-89694-460-7、2000円+税


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【河上康子 20020620】
●「木と動物の森づくり」斎藤新一郎著、八坂書房

 林学を専門とする著者の観点から書かれた、果実と種子散布、及び動物散布に関する教科書的な著作である。植物学者や生態学者により書かれた同類の書とはやや趣が異なり、随所に林学的な記述や林業技術に関する話題が登場して興味深い。内容はやや固めであるが、ページを繰る毎に、紙面の多くを費やされた、果実や種子の美しい細密画を用いた図説が現われ、図鑑のような感覚でも楽しめる。

 お薦め度:★★  対象:植物、特に林学に興味のある人


【瀧端真理子 20020615】
●「木と動物の森づくり」斎藤新一郎著、八坂書房

 「種子散布」と言ったら、どんなにかっこいい理論かと思ったら、ずいぶん地味な学問だ、ということがよく分かる本。
 一番面白かったのは、ハイマツの束生の話でした。ハイマツ種子の主な散布者はホシガラスだそうですが、ホシガラスはハイマツの種子をたくさん一つの穴に埋め(てたまに食べ忘れる)ので、ハイマツは束のように固まって発芽します。この束生は、固まって生えることで、食害や他の植物による被陰に団結して対抗! また発芽した胚軸は束になって重たい土に対抗、子葉を地上に持ち上げるそうです。
 ハイマツは、種子が熟すまでは球果を緑色に保ち、種子が熟すと、緑の樹冠上に熟した赤褐色の球果を目立たせ、ホシガラスを呼ぶ(=ディスプレイ効果)工夫もしています。このような木と動物が生み出す森づくりを、筆者は長年にわたる林業試験場での経験を生かし、豊富なイラスト入りで紹介しています。
 書き方が単調なのと用語が難しいので、チャート式参考書のように少し整理して全体の見取り図を示して欲しいと思いました。園芸ファンには樹木繁殖の小ワザを発見する密かな楽しみがあるでしょう。

 お薦め度:★★  対象:中級かつ盆栽ファン


【和田 岳 20020621】
●「木と動物の森づくり」斎藤新一郎著、八坂書房

 前半では、樹木の果実と種子、種子散布、及び栄養繁殖について、用語を出してくれます。樹木の種子や繁殖絡みの用語集としては、参考になるかもしれませんが退屈です。後半では、動物散布の内、被食型散布と貯食型散布について、著者の研究内容、及びよく知っている北海道を中心に紹介されます。植物の側から見た動物散布の様々な側面は、なかなか興味深く読めました。

 お薦め度:★★  対象:


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