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本の紹介「菌世界紀行」

「菌世界紀行 誰も知らないきのこを追って」星野保著、岩波科学ライブラリー、2015年12月、ISBN978-4-00-029645-8、1300円+税


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【森住奈穂 20160414】【公開用】
●「菌世界紀行」星野保著、岩波科学ライブラリー

 雪腐病菌(ゆきぐされびょうきん)という耳慣れない名前のこの菌は,雪の下で繁殖し植物に感染、氷点下でも働く酵素を持つ。ピシウム、ボレアリス、イシカリエンシス、インカルナータ、各種の名前もややこしい。農家にとっては作物を枯らす病気の主なのだから、困りもの以外の何ものでもないが、この菌(とアルコール)を心から愛する著者は、しかめっ面を装いつつ心躍らせ、世界各地へと採集に向かう。北極圏では野生動物、ロシアではマフィア、南極では船酔い。行く先々で巻き起こる出来事や登場人物が、本人によるイラストとともに臨場感あふれるタッチ(カッコ書きの心情の吐露がとにかく多い)で描かれる。「その時代、その土地でしか感じられないような息遣いを伝えることができていたら」。伝わりましたよ、もちろん!雪腐の存在を心眼によって見抜く技(切手の図版から!)などは見倣いたいところ。

 お薦め度:★★★★  対象:旅は道連れ世は情け。シベリア鉄道にあこがれる旅好きなひと
【萩野哲 20160411】
●「菌世界紀行」星野保著、岩波科学ライブラリー

 「雪腐病菌」という非常にマイナーな生物(本書を通じて到底控えめではない著者でも認めている)を専門としている一研究者の、「雪腐病菌」を求めて世界中の寒い場所を回ったドタバタ紀行文である。「雪腐病菌」自体について大した記述もなく、本当に種数も少ないのかもしれないが、とりあえずはフツウの人は行かない辺境の地を旅して回る著者の悲喜劇を、著者が描いたわかりにくいけれども汚い図を見ながら気楽に読める本である。

 お薦め度:★★★  対象:世の中には変な人もいるものだと確認してみたいヒマな人
【和田岳 20160228】
●「菌世界紀行」星野保著、岩波科学ライブラリー

 雪腐病菌という一群の菌類研究者の採集旅行記。雪腐病菌は、その名の通り、雪や氷がある寒い地域にのみ生息している菌らしく、調査に行くのは寒い場所。最初は北欧、ついでロシア、それから南極、エピローグでイラン。世界中を股にかけた採集行が展開される。
 プロローグに曰く「そこで本書では、雪腐病菌という非常にマイナーな(ほとんど誰も知らない)菌類の性質と、それを探す海外調査を、できる限り主観的に記述してみようと思う」。あとがきに曰く「本所は、20年にわたる私の海外調査のエピソードを臨場感あふれ、才気ほとばしる筆致で記述した異色の菌類解説書だ」。とまあ、これを読めば分かるように、とってもふざけた筆致で書かれた、とても楽しい一冊。ロシアでの調査は大変そうだなぁとか、オレグはいい人だなぁ。と、自らを安全な場所に置いた上で、他人の苦労話を読むのは楽しい。ってゆうか、ロシアでは、雪腐病菌を採集する以外は、ウォッカ飲んで泥酔してるだけで、とくに苦労しているようにも思えなかったりもする(オレグのおかげで!)。
 というわけで、ものすごく楽しく一気に読める。ただ惜しむらくは、雪腐病菌については、イシカリエンシスやインカルナータてな名前を聞きかじった以外は、さほど分からなかったりすること。菌類解説書であると言われると、そうかなぁ、と思ったりするわけである。

 お薦め度:★★★  対象:なんか本でも読んでみよっかな、と思ったら
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