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本の紹介「奇妙な菌類」

「奇妙な菌類 ミクロ世界の生存戦略」白水貴著、NHK出版新書、2014年4月、ISBN978-4-14-088484-3、780円+税


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【森住奈穂 20160624】【公開用】
●「奇妙な菌類」白水貴著、NHK出版新書

 菌類というと、何かおどろおどろしい、得体の知れないイメージがある。本書にはカラーの口絵写真が8ページあり、まさにイメージ通りの奇妙な菌類たちが並んでいる。色や形がさまざまなことはもちろん、毒を持つもの、宿主を乗っ取ってゾンビのようにして操るもの。中でも奇妙奇天烈なのは、花に化ける菌。寄生した植物に偽物の花を作らせ、本物よりも甘い蜜まで作って昆虫を呼び寄せ、精子を運ばせるという。丁寧すぎる。見事なトラップに私もまんまとおびき寄せられ、お財布を出してしまった。我々と同様、他の生物から栄養を得る必要がある菌類。あの手この手の生存戦略や、地球生態系を支える分解者としての能力を知らしめれば、もう「バイキン」なんて言わせない、とは著者の弁。

 お薦め度:★★★  対象:とらえどころのないところに魅力を感じてしまうひと
【萩野哲 20160617】
●「奇妙な菌類」白水貴著、NHK出版新書

 本書の前書きに、菌類の研究者である筆者は“菌類のことなど気にかけている人はほとんどいない…どころか、蔑み、忌み嫌う傾向があるようだ”と感じており、“スター性のある菌類を紹介し、世間一般に抱かれているマイナスイメージを払拭したい”と本書を著した経緯が紹介されている。更に、菌類は植物よりもずっと動物に近く、従属栄養者として「弱肉強食」の世界に生きていることも語られている。実際、本書で紹介された“スター”たちは驚くべき生活を送っている(行動を起こしている?)ものばかりである。一例を示すと、昆虫などの特異的な部位のみに寄生するラブルベニアや、トビムシの精包の柄につくエニグマトマイセスなど、何でそのようなニッチに行き着いたのか、とても不思議な気分にさせられる。進化の妙に思いをはせられる一冊である。

 お薦め度:★★★  対象:進化の妙に触れたい人
【六車恭子 20160624】
●「奇妙な菌類」白水貴著、NHK出版新書

 とかく私たちは目の前に在るものには関心を抱くが…。本書は妖しげなミクロの世界に私たちを誘う。見えないものがこの世界を整えてくれたのだ!人類はしらずにその成果を掠めとっているだけかもしれない!
 アリが操られているように、花に化けて妖かされるように、この世界が終末を迎えるのは、菌類が世界を作り替えようと計らったからかも知れない、などと思ってしまった次第です。
 地味そうな菌類の秘めた力に脱帽させられました。

 お薦め度:★★★  対象:山野草好きな人
【和田岳 20160526】
●「奇妙な菌類」白水貴著、NHK出版新書

 日々菌類をメジャーにするための活動に取り組んでいる菌類研究者の著者が、「バイキン」という言葉と共にある菌類のマイナスイメージを払拭するべく、「スター性のある菌類」を紹介した一冊。
 菌類のアウトラインを紹介した後、共生者、寄生者、分解者とさまざまな顔を持つ菌類が紹介されていき、最後は人との関わり。という枠組みのもと、とにかく、不思議な菌類の不思議な暮らしがこれでもか!と出てくる。
 鳥が果実と間違えてつつくキノコ、甘い地下生菌マッティロロマイセス(食べたい!)、藍藻の菌根菌(?)ゲオシフォン、シロアリに育てさせて暮らす菌核ターマイトボール、花に擬態して精子を運ばせる菌(蜜を作らせて、蜜標まで用意!)、9.65平方kmに拡がる世界最大のオニナラタケ、ゴキブリの尾毛に寄生するヘルボマイセス、トビムシの精包の柄にのみ付くエニグマトマイセス、アリをゾンビに変えるオフィオコルディセプス、弾を撃ってセンチュウやワムシを狩るハプトグロッサ、カタツムリの殻にのみ生えるハロレププ。変な菌類のオンパレード! 不思議で多様な菌類を堪能。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物に興味があるひとすべてに
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