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本の紹介「建築する動物たち」

「建築する動物たち」マイク・ハンセル著、青土社、2009年8月、ISBN978-4-7917-6485-3、2400円+税


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【和田岳 20120824】【公開用】
●「建築する動物たち」マイク・ハンセル著、青土社

 著者は鳥の巣の本を書いてる人で、てっきり鳥屋だと思っていた。鳥の巣だけじゃなく動物の建造物全般に興味のある人だったらしい。鳥の巣、虫の巣、ビーバーのダムなどなど、さまざまな動物の建造物が紹介される。
 「つくり手たち」は、圧倒的に節足動物と脊椎動物。「つくり手は世界を変える」地形や環境を変える。しかし「つくり手に脳はいらない」。そして「ここの責任者は誰だ?」責任者はいない。鳥の巣の進化から、罠づくり、道具使用、最後には美的感覚の進化まで。話は幅広い。動物の建造物つながりで、こんなに話がふくらむんだなぁ、って感じ。

 お薦め度:★★★  対象:延長された表現型に興味のある人には特に

【六車恭子 20120824】
●「建築する動物たち」マイク・ハンセル著、青土社

 動物界をただ見て歩くだけでなく、絹糸、棲家、ケース、塚、巣を作る種々雑多な動物たちの行動をいくらか理解して、そこに何らかのパターンを発見することを目的として生まれた「動物がつくるものと、つくる行動の生物学」の学問だという。
 われわれ人間の建造物も及ばない換気システムを持つシロアリ塚、ビーバーが築くダムの建造物、蜜蜂がつくる美しい六角形の蜜蝋、単細胞のアメーバがつくる砂粒で出来た複雑なオブジェのような家・・・、これらの建築の行動に関係している決定過程はなんなのだろう?、著者の疑問はうまれる。そして働き蜂の活動はその齢にも関係しており、刺激と反応の連鎖を通して巣と対話しているのだと気づかされる。「つくり手に脳はいらない」「ここの責任者は誰だ?」これらキャプションが意外な切り口で納得できるのだ。生き物を見つめる視点が豊かになる一册である。

 お薦め度:★★★  対象:どこに焦点をあてるか思案している学部生

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