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本の紹介「けもの道の歩き方」

「けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然」千松信也著、リトルモア、2015年9月、ISBN978-4-89815-417-5、900円+税


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【西本由佳 20160220】【公開用】
●「けもの道の歩き方」千松信也著、リトルモア

 猟というと、生きものを追いつめて殺すことを楽しむ特殊な趣味というイメージを持っていた。この本を読むと、実際の猟というのは、ただ鉄砲で一方的に動物を殺すものでないことがわかる。ヌタ場からイノシシの行動を追うとき、木にすりつけた泥、足跡、身ぶるいしたときの飛沫などから、1キロくらいは追跡が可能なこともあるそうだ。葉っぱ1枚から獲物の動きを読みとり、けもの道の「違和感を感じられるときは、自分も山の中で狙う獲物と同じ動物なんだと思えるときもある」という。生きものを殺すことについては、何を残酷だと思うかは人によって違うという。活け造り、マグロの解体実演、虫の命、「自分が違和感なく動物の命を奪える基準を各自がそれぞれ線引きしているだけだ」という。著者は自分の立ち位置を、特に気負うことなくもっている。それを読んだこちらが、自分の立ち位置について考えさせられる本だった。

 お薦め度:★★★  対象:猟を残酷だと思う人
【萩野哲 20160225】
●「けもの道の歩き方」千松信也著、リトルモア

 猟師になって14年の著者が猟にまつわる様々な事象を記している。だが、最も著者が言いたかったことは最終章にまとめられているように思う。“残酷さの定義”「本当に人間は残酷な生き物だ」。“自然を読む暮らし”「出会いや発見で飽きることがない。自然の変化に合わせて臨機応変対応する」。“狩猟採集生活と汚染”「人間も適度に汚染を引き受ける必要はないのだろうか」。“現代の猟師”「猟師が絶滅危惧種だが、今後どうなるか、今が転換期となっている。“狩猟文化の多様性”「様々な猟が禁止されたり廃れたりしているが、刻々変化する自然に対応するため層の厚い狩猟文化を維持していくことが大切なのではないだろうか」。“生活者としての猟師”「著者にとっての猟師は職業でも趣味でもなく、生活の一部なのだ」。

 お薦め度:★★★  対象:猟師の生活を考えてみたい人
【和田岳 20160226】
●「けもの道の歩き方」千松信也著、リトルモア

 京都大学在学中に猟師になって、京都市近郊で罠猟を行っている著者の『ぼくは猟師になった』に続く第2弾。生活の一部として猟をしているという著者が、シカなどを罠で捕まえ、とどめを刺し、食肉として活用している様子を紹介。同時に、猟師の目から見える京都を中心とした日本の自然の有様や、猟師の現状を考える。
 近年の大都市近郊の自然の変化、シカ、クマ、ニホンザルに、アライグマなどの外来生物。なにかと話題になる哺乳類との出合いの話題は、興味深い。しかし一方で、本人が直接体験していない部分に関しては、さほど目新しい情報や視点が提供されるわけでもない。

 お薦め度:★★  対象:獣害問題や罠猟の実態をほとんど知らない人
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