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本の紹介「カラスの早起き、スズメの寝坊」

「カラスの早起き、スズメの寝坊 文化鳥類学のおもしろさ」柴田敏隆著、新潮選書、2002年7月、ISBN4-10-603515-4、1100円+税


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【瀧端真理子 20031121】
●「カラスの早起き、スズメの寝坊」柴田敏隆著、新潮選書

 『NIRA』の連載記事に手を入れてまとめ直した新潮選書の一冊。「男の浮気は自然公認」といった時代錯誤的小見出しに、まずびっくり。戦前生まれのオヤジにターゲットを合わせ、鳥についての薀蓄を語って聞かせる手法は、著者のサービス精神の賜物だろうか?
 フェミニスト的反発心を押さえて読めば、「ニワトリのジョナサン」「鳥葬」など、うなずける話題や、猛禽のヘビ食をインスタントラーメンに例えるなど、 楽しい着眼点も。帯に書かれた中川志郎さんの「難しいことを易しく、易しいことを面白く」のキャッチコピーが良くも悪くも本書の位置付けを物語っている。

 お薦め度:★  対象:おじさま

【寺島久雄 20031220】【HPのみ公開用】
●「カラスの早起き、スズメの寝坊」柴田敏隆著、新潮選書

 鳥社会の不思議、鳥の驚異の身体システム、自然界とのバランス、そして野生と適応を各種の鳥で解明してくれている。
 神、佛、和歌、俳句、神話等々…と出て来る、広角レンズで見る鳥類学を面白く語るが如くに展開されている。

 お薦め度:★★★  対象:鳥の美しさ可愛さを別の角度から見たい人に

【村山涼二 20031226】【HPのみ公開用】
●「カラスの早起き、スズメの寝坊」柴田敏隆著、新潮選書

 著者は「文化人類学があるならば文化鳥類学があってもよかろう」と言っている。 I. 鳥社会の不思議 II. 驚異の身体システム III. 自然界のバランス IV. 野生と適応  に分けられた60のテーマのそれぞれが面白い。
 II. の「海水を飲んではいけない」 人間は遭難したとき海水を飲むと、腎臓を破壊して死ぬ。ところがミズナギドリやアホウドリのような外洋性の海鳥は、海水を飲んでも嘴の付け根の体内にある塩腺というフィルターで、過剰な塩分を体外に排出する驚くべき適応の機能を持っている。
 W.の「朝霞門を出ず」 本書の題名「カラスの早起き、スズメの寝坊」について、鳥の世界の目覚めと塒入の傾向を「アショフとウエーバー」の法則として示している。1.早起きの種及び個体ほど夕方遅くまで活動する。2.朝は夕方より暗い(低照度の)うちから活動を開始する。3.オスはメスより朝早く夕方は遅くまで活動する。4,5,6など。 取り上げた2例のように、人に伝えたくなる興味ある話題がいっぱいある。

 お薦め度:★★★  対象:自然の好きなどなたにも

【和田岳 20031226】【HPのみ公開用】
●「カラスの早起き、スズメの寝坊」柴田敏隆著、新潮選書

 元横須賀市博物館学芸員であり、山科鳥類研究所資料室長でもあった著者が、文化鳥類学と称して、鳥についての蘊蓄話を人間になぞらえて紹介した本。60の蘊蓄話が並んでいる。
 鳥についての知識を、多くの人にとってなじみのある話題になぞらえて面白く紹介しているのだが、安易に人間に当てはめすぎている。とくに行動生態学的な研究成果を人間に当てはめて語る時の配慮がまったく欠けている。その最たるものが「男の浮気は自然公認」などといったタイトル。
 そのような訳で、鳥の行動や形態などの事実・研究成果を紹介している部分は信じてもいいが、その解釈部分はおもしろがってもいいが一切信じない方がいいだろう。

 お薦め度:★  対象:鳥類学及び行動生態学について充分な知識を持っていて、人が間違った事を書いていたら見破れる人

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